日本産科婦人科学会(日産婦)は29日、2023年に国内で実施された体外受精で生まれた子どもが、前年より7842人増の8万5048人となり、過去最多を更新したとする調査結果を発表した。生まれた子の8人に1人に相当する。20歳代後半の妊娠率が上がっており、22年に公的医療保険が適用され、体外受精を受けやすくなったことが影響しているとみられる。
体外受精は不妊治療の一種で、卵子と精子を体外で受精させ、子宮に戻す。国内では1983年に初めて体外受精児が誕生し、2023年は累計で100万3360人となった。
治療件数は、前年より1万8034件多い56万1664件。年齢別に見ると、23年は39歳(4万6181件)が最も多く、42歳(4万5572件)が続いた。保険適用には、治療開始時に女性が40歳未満なら6回まで、40歳以上43歳未満は3回までとする要件があり、それぞれの年齢・回数の制限を見据えて治療を受けた人が増えたとみられる。
妊娠率をみると、22年は26歳以降で50%を下回ったが、23年は31歳まで50%を超えた。調査をまとめた片桐由起子・東邦大教授は、「体外受精のハードルが下がり、早い段階で踏み切れるようになったのではないか。必要な人が必要なタイミングで治療を始められることは重要だ」と話す。