ストーカーへの警告に被害申告不要、規制法改正へ…対応を迅速化し事態のエスカレート防ぐ

ストーカー被害の深刻化を受け、警察庁は、加害者への警告に被害者からの申し出を必要とする現行のストーカー規制法を改正し、警察の職権で警告できる制度を導入する検討に入った。違法行為を速やかに抑止するのが狙いで、居場所を特定する「紛失防止タグ」の悪用を規制する対策と合わせ、重大な被害の未然防止に万全を期す構えだ。
同法では、つきまとい行為などをやめるよう警察署長らが警告書を出す場合、被害者から申し出を受けることとしている。だが、被害者は報復を恐れたり、危害を加えられるリスクに気づかなかったりして、警察の積極的な介入を望まないケースも少なくない。
川崎市の住宅で今年4月、岡崎彩咲陽(あさひ)さん(当時20歳)の遺体が見つかった事件では、岡崎さんが元交際相手の無職白井秀征(ひでゆき)被告(28)(殺人罪などで起訴)からのストーカー被害を警察に訴えていたが、神奈川県警が同法に基づく警告を出す事態には至っていなかった。
事件を受け、警察庁は5月、被害者の安全確保を最優先に対処するよう全国の警察に改めて通達。再発防止策の検討を進めている。
ストーカー事案の相談は高水準で推移しており、全国の警察の受理件数は昨年、約2万件に上った。だが、警告件数は減少しており、昨年は前年比55件減の1479件にとどまった。
被害者への接近などを禁じる対策としては、2016年12月の同法改正で警告を経ずに「禁止命令」が出せるようになった。ただ、禁止命令は警告よりも重い「行政処分」で、十分な証拠収集などに時間を要する側面があるとされる。
このため警察庁は、重大事案に発展する恐れがあると警察が判断した場合、迅速に警告を出せるようにし、事態のエスカレートを防ぐ効果を高めたい考えだ。
一方、ストーカー被害を巡っては、無線で周囲のスマートフォンに信号を送り、位置を知らせる紛失防止タグの悪用が広がっている。このため、同庁はタグを相手の持ち物に仕込むなど、同意を得ずに位置情報を特定する行為も規制対象にする方針だ。