園児虐待、第三者委設置を見送り 栃木市「想定する成果得られない」

職員による園児への虐待が昨年発覚した栃木市都賀町の私立認定こども園「都賀幼稚園」を巡り、他の虐待事例や保育実態の解明のため元職員や元保護者有志らが設置を陳情し、市議会も全会一致で陳情を採択した「第三者委員会」について、市は29日、設置しないと表明した。市は「設置しても依頼による調査にとどまり、陳情者が想定する成果が得られる可能性は低い」と理由を説明した。
陳情は、都賀幼稚園問題を考える会(旧都賀幼稚園の被害者を救う会)が2月5日に提出し、6月定例市議会で採択された。元職員らが告発した複数の虐待事案について客観的に解明する第三者委の設置を園、あるいは市に求めていた。
議会から採択陳情の送付を受けた市は、捜査、調査、監査権など第三者委の法的権限について弁護士に意見を求めた結果、地方自治法上の付属機関の場合、独自の条例で設置する場合のいずれも強制力のある権限付与は難しいとの見方が示された。このため、市は元職員や保護者らが求めるような調査はできないと判断し、設置を見送った。
代替として、園と行政、保護者や有識者で構成する「運営協議会」の設置方針を固めた。市内の各保育所、こども園への設置を目指し、制度設計を進める。
元教員らが求めている他事案の実態解明は、市の再調査が唯一の手段となる。市は県との協議の場に学識経験者も加えるなどして解明を進めたい考えだ。【太田穣】