特別天然記念物のタンチョウなどへの影響が問題視されている、釧路湿原周辺のメガソーラー建設。4日に新たな動きが。
釧路市 中村基明副市長)
「本市における太陽光発電施設の適切な設置及び管理のための必要な手続き等について定めるものであります」
釧路市は、自然環境と共生できない太陽光発電施設の建設を規制する条例案を、市議会に提出しました。
釧路市内の太陽光発電施設は2012年には25カ所でしたが、現在は、およそ600カ所にまで急増。希少生物や自然環境を脅かす施設も増えているため、市は条例制定を進めてきました。
条例案ではタンチョウなど5種類の希少生物を「特定保全種」に指定。この5種類が生息する可能性が高いエリアを「特別保全区域」とし、生息調査や保全対策を事業者に義務付け、従わない場合は建設を許可しないという内容です。
釧路市 鶴間秀典市長)
「条例をしっかり通して、みんなと釧路湿原、釧路全体の自然も含めて守っていきたいと思う」
条例案がこの定例会で可決されれば、来年以降に建設される太陽光発電施設から適用されます。
太陽光発電をめぐる問題は釧路だけではありません。
廣瀬美羽記者)
「住宅街から道路を挟んですぐそばの緑豊かなこの場所で、メガソーラーの建設が予定されています」
北海道・胆振の白老町石山地区。住宅街のそばにある74ヘクタールの土地に、東京とシンガポールの事業者が太陽光発電施設の建設を予定しています。
それぞれの事業者は6月に住民説明会を開きましたが、その後も住民からは建設に反対する声が上がっています。
萩野里町内会メガソーラー反対有志会 伊藤昭さん)
「こんな良いところないですよ、自然豊かで温泉があって動物とも共存できてここに別荘も建てたりみんなそういう感覚ですよ。ここが良くて来ているわけだから何も壊さないでほしい」
伊藤さんが代表を務める有志の会は6月末、周辺住民らから集めた535筆の反対署名を町長に提出。その後、インターネット上でも反対署名を募り、現在およそ4万筆が全国から集まっています。
その石山地区から5キロほど離れた竹浦地区でも別の計画が持ち上がっています。
NPO法人北海道自伐型林業推進協議会 大西潤二代表理事)
「このあたり全体ですね。ここから奥に向かって約100ヘクタール皆伐しています」
もともと東京の会社が所有していたこの土地は、木を売るための伐採地として5年ほど前、およそ100ヘクタールの木がすべて切られました。その後、この土地を買収した岡山県の会社がメガソーラー建設を計画していますが、白老町で林業に携わる大西さんは疑問を感じています。
NPO法人北海道自伐型林業推進協議会 大西潤二代表理事)
「伐採後、5年を経過したらいわゆる造林ですね。植林するという義務が発生してくる。そのタイミングで土地所有者から太陽光の会社に用地転用の相談があった。すなわちこれは植林義務逃れ、造林義務逃れじゃないかと」
森林法では天然林を伐採した場合、伐採開始から5年で新たに木を植えることが義務付けられていますが、太陽光発電施設の開発許可がある場合は造林の義務を免れることができます。大西さんはこの法律が、造林逃れを目的とした太陽光発電施設が増えるきっかけになっているのではないかと指摘します。
NPO法人北海道自伐型林業推進協議会 大西潤二代表理事)
「こういうことが横行すると土地所有者が皆伐した後に負担するリスクを避けるために、太陽光事業に転がってしまうとそういうことが横行してしまうと私は危惧しています」。
白老町で相次ぐ太陽光発電をめぐる問題。住民らの声に対し、町長は。
白老町 大塩英男町長コメント)
「町内におけるメガソーラー建設に対して、反対の声があることは、町としてもしっかりと受け止めているところであります。事業者に対し、住民の不安や疑問に誠実に対応するよう、強く求めていきたいと考えております。」