【独自入手】アレフ内部の音声記録 “松本智津夫元死刑囚の二男”が教団幹部“裏会議”に参加

オウム真理教の後継団体「アレフ」について、公安審査委員会は麻原彰晃こと松本智津夫元死刑囚の二男が教団の「役職員」だと初めて認定しました。
日本テレビは、その二男とみられる人物が参加する教団内部の会議の音声を独自に入手。そこには自らを「教祖」と呼び、幹部に指示を出す様子が記録されていました。

二男とみられる人物「私が悪いと言っているんだな。あ?」
アレフ幹部「このままでいいのですか」
二男とみられる人物「論点すり替えないでよ。私の父同様に死ねというわけだな」
アレフ幹部「死ねとは言っていません」
二男とみられる人物「だって父がやった通りに、だから父は戦った。その結末は死だろ」
アレフ幹部「違いますよ」
二男とみられる人物「あなたは父と同じようにやれと言っている」
アレフ幹部「尊師のやったことは全部見ていないですよね」
アレフの幹部を相手に声を荒らげる男性。この人物はオウム真理教の教祖、麻原彰晃こと松本智津夫元死刑囚の二男とみられます。
日本の犯罪史上例のない未曽有の無差別テロ、地下鉄サリン事件。松本智津夫元死刑囚は事件の首謀者として逮捕されましたが、オウム真理教は「アレフ」などに名前を変え、30年たった今も活動を続けています。公安調査庁によると、現在「アレフ」は全国に20か所以上の施設があり、信者はおよそ1180人いるとみられています。
日本テレビは、教団内部の会議の音声を独自に入手。記録されていたのは、2021年6月に行われたとされるリモート会議の様子でした。教団幹部10人ほどが参加し、1時間6分にわたり話し合いが行われていました。
二男とみられる人物「はい、じゃあ始めましょう。最初に公調(公安調査庁)から返事がきたのですが、それについてどうするかと」
会議を仕切るのは二男とみられる人物。教団の資産報告などを求める公安調査庁に対し、いら立つ様子も記録されていました。
二男とみられる人物「つまりですね、最低だろうがなんだろうが、やってくる連中ってことです。今の公調(公安調査庁)は」
中には、こんなやりとりも―
最高幹部「荒木君の声こもっているんだけど」
「ああそうですか、すみません。いかがですか?まだこもっていますか?」
幹部A「非常に聞きにくいね」
会話の中に登場する“荒木君”とは、オウム真理教時代からの広報担当者で、アレフの幹部である荒木浩氏とみられます。
私たちは、会議の音声と日本テレビが過去に取材した荒木氏ら幹部の音声を国際的な評価基準を持つ解析機関で比較・検証。同一人物の声であると判断しました。
また、こういった会議の音声データについては、公安調査庁も存在を把握しているということです。
「アレフ」の運営方針については、これまで幹部らの「合同会議」によって決められ、二男は関与していないとされてきました。
しかし、教団関係者によると、実際には二男が参加する“裏会議”が複数存在。そこで公安調査庁への対応や教団資金の運用、信者への対応などについて、話し合われているといいます。
二男は信者の前に一切姿を現さず、“裏会議”で決定した内容が表の「合同会議」を通じて、各道場や信者に伝えられているといいます。
今回入手した音声も、その“裏会議”のひとつだといいます。
幹部C「ひとつは〇〇さんの出家について、どう判断するか」
会議では、信者の出家について判断を下す場面も。
二男とみられる人物「自分が修行者である自覚が足りない。そこをしっかり」「修行者として努力してきたこと、努力しなければならないことを理解していない」
幹部C「わかりました、ちょっと伝えてみます」
――二男はどんな人物なのでしょうか。
今から31年前、二男が生まれた翌日、松本智津夫元死刑囚は信者に向けてこのように語りました。
「1994年、パンチェン・ラマ(チベット仏教の高僧)の生まれ変わりが私の2番目の息子として転生した」
6人きょうだい(娘4人、息子2人)の末っ子として誕生した二男。
二男の母「きょうは生後9か月の二男を連れてきました」
多くのメディアが集まる会見の場にも姿をみせました。この会見から2か月後、地下鉄サリン事件が発生。松本智津夫元死刑囚は逮捕されますが、勾留中に弁護士を通じて信者にこんなメッセージを発信していました。
「二男を中心とした子どもたちを私と観想してください。それによって、私がどこにいようとも、あなた方の霊的な道筋が確保されるでしょう」
組織の存続を二男に託すような発言をしていたのです。教団の機関誌には、4歳の頃の二男が後継者として育まれていく様子が紹介されていました。
その後の詳細な動向はわかっていませんが、今からおよそ10年前、二男が20歳の頃から教団の運営に深く関わりはじめたとみられています。
2018年、父親の松本智津夫元死刑囚の死刑が執行されます。会議に参加していた幹部によると、その頃から、二男は権力を誇示する姿勢を強めていったといいます。
会議に参加していた幹部「麻原教祖の死刑のあたりから『俺が最高権力者だ。俺に逆らったらどうなるかわかっているのか』という態度に」
音声では、二男とみられる人物が幹部とぶつかる場面も。
最高幹部「真剣に私はこの教団をどうするか考えているのではないですか」
二男とみられる人物「その当路(通るべき道)をどうするか。全部私に責任を放り投げると繰り返している」
最高幹部「放り投げるというか、責任はグルが持たないのでは誰が持つんですか」
グルとは宗教的指導者を意味し、オウム時代は松本元死刑囚のことを指していました。
二男とみられる人物「いや、だからさ、話がおかしな方向にいっているけどさ、もしそうだとしたら要するにグルとしての責任を何で私が取らなきゃいけないんだい」
最高幹部「尊師が(二男を)二代目と指名したからでは?」
二男とみられる人物「父が指名したから、責任を取らないといけないとはならない」
最高幹部「基本的に尊師が言ったことを守らないというのはどうなのかと」
二男とみられる人物「だから私、教主じゃなくて教祖だよ。父が任命したのは」
自らを「教祖」と呼ぶ一方で、責任からは逃れるような発言をしていました。
日本テレビは、母親と2人で暮らしているとみられるマンションを訪ねました。
記者「あちらの部屋です。幕のようなものがかかっていて、中の様子はあまりわからない」
今年4月、埼玉県警が家宅捜索を行ったところ、部屋から現金数千万円が見つかったといいます。
オウム事件被害者への賠償金の支払いが滞る中、見つかった多額の現金。教団が支払いに応じないのも、二男の意向によるものだと公安審査委員会も認定しました。
幹部D「私は尊師(麻原彰晃)もグルですけど、猊下(げいか)(二男)もグルです。猊下のことを信頼し従います。帰依します」
二男とみられる人物「うれしいことを言ってくれますね」
日本テレビは、アレフに対して二男の教団内での位置づけなどについて質問を送りましたが、4日までに回答はありませんでした。
3日、公安調査庁の請求に基づいて審査を行った公安審査委員会は、二男についてアレフの“役職員”であると初めて認定しました。
教団の危険性について調査を継続している公安調査庁は…
公安調査庁調査第一部 西尾和浩第二課長
「麻原の二男が麻原から後継者として指名されていたという情報も得ている。そのような者が団体を率いているのは重要なものだったと思いますし、これまで表に出ていなかった二男について、法に基づいて報告しなければならないということを示していただいたと受け止めているので、実態を隠して活動するのは許さないというメッセージになったのではないか」
公安調査庁は、今後も教団の動向を注視していくとしています。