石破茂首相(自民党総裁)が7日、辞任の意向を表明した。党総裁選前倒し要求の提出日とされた8日前日の決断。「党の分裂を避けるべきだ」として同党の菅義偉副総裁(元首相、衆院神奈川2区)と小泉進次郎農相(11区)が6日深夜に行った説得が「自民としての最後の一手」(党幹部)として実った格好だ。厳しい選択を迫られていた議員の間からは「『踏み絵』を直前で避けられた」(中堅議員)との安堵(あんど)の声が漏れた。
菅、小泉両氏は6日午後8時半ごろに首相公邸入りした。菅氏は約40分後、小泉氏は2時間後の10時半ごろに退出。公邸を舞台とした土曜の深夜会談は異例で、その時間の長さからも突っ込んだ話し合いが行われたとみられていた。
党幹部によると、菅氏は前倒し要求が記名式で行われることを引き「提出する議員にもしない議員にも大変な覚悟となる。亀裂は避けられない」と指摘。「(少数与党にあって)首班を手放せば取り戻せる保証はないが、その座に固執して党を割ってしまうのは最悪だ」と党の結束を最優先に対応するよう促したという。
小泉氏も「前倒しを求める議員も求めない議員も自民の将来に危機感を抱き悩む仲間だ」として「分裂を防げるのは党総裁の英断しかない」などと菅氏とともに自発的な退陣を求めたとされる。首相は「重く受け止めたい」と2人の意向を引き取ったという。
石破氏と親しい党幹部は「総理へ『党分裂を避けるために身を処すべきだ』と進言して以降、電話に出てもらえなくなっていた」という。「ほかにも同様のケースが相次いでいた」とした同幹部は「総理が信頼を寄せる2人(菅、小泉両氏)との会談が党として取り得る『最後の一手』だった。総理のかたくなな姿勢や思いがほぐれ、冷静な判断ができるようになったのだと思う」と推測した。