冤罪防ぐはずのDNA型鑑定で悪質不正 識者「裁判への裏切り行為」

佐賀県警で明らかになった、DNA型鑑定を巡る科学捜査研究所職員の虚偽報告。県警は「公判への影響はない」とするが、識者は「公正な裁判の前提が揺らぐ重大事態だ」と批判する。
刑事司法を巡っては捜査機関による自白の強要などで冤罪(えんざい)が相次いだ反省から、客観的証拠の重要性が増している。特にDNA型鑑定は事件や事故の現場で採取した血液や毛髪を分析し、そのDNA型が容疑者や被害者のものと一致するかを調べるもので、有罪・無罪を判断する上で決定的な証拠になり得る。
過去には足利事件(1990年)や東京電力女性社員殺害事件(97年)など、DNA型鑑定の信頼性が揺らいだことが決め手となり、再審無罪となった事件も複数あった。
冤罪を生み出しかねない悪質な虚偽報告について、刑事司法に詳しい甲南大の園田寿・名誉教授(刑法)は「捜査や公判への信頼に対する裏切り行為だ」と非難。県警が「捜査や裁判への影響はなかった」と説明したことに対しても「再鑑定の試料が残っていないものもある。なぜ断言できるのか」と疑問を呈した。
約7年間も不正を見抜けなかった県警の責任は重大だとし「組織的な問題と言える。信頼回復のためには県警のDNA型鑑定を徹底的に洗い直し、外部の目を入れて検証した上で再発防止策を示すべきだ」と話した。【平川昌範】