【解説】どうなる?“ポスト石破”の行方 フルスペック型で優位なのは…

突然の辞任表明から一夜、ポスト石破レースが一気に動き始めています。日本テレビ・政治部官邸キャップの平本典昭記者が、次の3つのギモン「『異例』トップ選び…誰が有力?」「いつ?形式も選挙戦に影響」「自民党総裁選…陰の主役『野党』」について解説します。

次の総裁候補としてこれまでの取材で、5人の名前が挙がってきています。
まず前回決選投票で石破首相に敗れ2位だった高市早苗・前経済安保担当相。3位だった小泉進次郎・農水相。
さらに林芳正・官房長官は8日、出馬を検討する考えを示しました。そして小林鷹之・元経済安保担当相は8日『news every.』に出演し「仲間と相談し熟考していきたい」と話していました。
そして茂木敏充・前幹事長は8日「1番乗り」の形で立候補を表明しました。

──まず1つ目、異例の辞任劇からスタートしたトップ選び、現状は誰が一番有力ですか?
まだ、メンバーも出そろってない段階ですが、1つの目安となる数字を用意しました。
7月の参院選の前に自民党国会議員100人に仮に選挙結果を受けて石破首相が退陣した場合、誰が次のトップにふさわしいかを聞いた数字です。
上位3人をみてみると、1位が小泉さんで25人。2位が高市さんで17人。3位が林さんで11人でした。
複数の議員が「小泉さん、高市さんを軸とした戦いになる」という見方を示しています。
──小泉さん、高市さんが人気の理由はなぜでしょうか?
具体的な声を紹介します。小泉さんについてある若手議員は「世代交代で一気にイメージチェンジが可能」、別のベテラン議員は「コメ対策で成果も出した。人気・実力ともに1番だ」と話しています。
高市さんについてです。保守的なスタンスをとることが特徴です。参院選で自民党が大敗した理由の1つは「参政党に保守票を奪われたこと」という指摘があります。複数のベテラン議員が「奪われた保守票を取り戻せるのが高市さんだ」と指摘しています。
──2つめのギモン、総裁選はいつ、どういった形式で行われるのか? まず、最新情報は入ってきていますか?
はい、まず「いつ」については、最新情報で、来月4日に行う方向で最終調整に入っています。
また、形式ですが自民党の総裁選は2つの形式があります。
1つ目は「フルスペック型」。国会議員に加えて党員・党友も参加する形式です。長所は議員だけでなく国民・有権者の声に近い党員の意思を反映できる点。短所は長い時間が必要という点。
2つ目は「簡易型」。党員は参加せず国会議員と地方県連の代表で決める形式です。長所は短い時間で決められる点。短所は党員の意見を反映できない点です。
こちらは「フルスペック型」で行う方向で最終調整に入っています。
実はこの形式が、選挙戦にも影響するとみられていたんです。
高市さんと小泉さんでみると、フルスペック型だと高市さんが優位、簡易型だと小泉さんが優位という指摘があります。なぜでしょうか。それは、前回の総裁選の結果を分析するとみえてきます。
1回目投票、高市さんは議員票72票、党員票109票。小泉さんは議員票75票、党員票61票。高市さんは、小泉さんより党員票を50票近く多く獲得しました。ですので、党内には「フルスペック型」は高市さんが優位、「簡易型」は小泉さんが優位という見方が出ていました。
──となると、高市さんが優位とも思えるのですが?
そうとも言えない面もあります。例えば野党との連携という面では高市さんに対して自民党内からは「保守的な主張が非常に強く、野党との連携はしづらい」という声もあるんです。
──野党という言葉が出ました。それでは3つめのギモンです。異例の総裁選、陰の主役は「野党」というのはどういうことでしょうか?
今回の総裁選、次のリーダーには3つのことが求められているとみています。
1つ目はバラバラになった「党の結束力」を高めること。2つ目は「国民の信頼」回復。中でも、参院選で失ったとされる保守層の支持を取り戻すこと。3つ目が「野党の協力」を得ること。
これは去年の総裁選ではなかったテーマです。ですので、実は今回、自民党の総裁選ではありますが、陰の主役は「野党」とも言えるんです。
──その野党は、今回の自民党総裁選をどうみているのでしょうか?
ある野党の党首が本音を語ってくれました。「われわれ野党の政策を受け入れてくれるのが誰なのか。誰でもいいから早く決めてくれ」と話しています。
参院選から8日で50日です。トランプ政権との関税交渉など外交は進んだ一方で、物価高対策の具体的な与野党の協議は進んでいません。誰がトップになろうとも自民党内をまとめ、野党との交渉を早く進めてほしいというのが、野党の本音だと言えます。
──気になるのは、やはり生活に直結する給付や減税がどうなるか。総裁選では争点になっていくのでしょうか?
自民党は参院選で一律2万円給付を打ち出しましたが、選挙で大敗しました。逆に、多くの野党が減税を打ち出し議席を伸ばしました。この選挙結果を受けて、今回のポスト石破レースでは、それぞれの候補者が2万円給付をどう修正するのか。具体的なビジョンが問われていくと思います。
給付がメインなのか、減税に踏み込むことはあるのか。立憲、維新、国民民主など、どの野党と連携して進める戦略なのか。
あるポスト石破候補の1人は「去年の総裁選とは全く違う景色になる。自民党をまとめ野党も味方に付けられるリーダーが勝つことになる」と話しています。
──誰が総裁になるかで、野党のどこと組むかが変わってくる可能性もあるでしょうか?
あると思います。いま自民党を取材していますと、組む相手としてよく聞くのは、日本維新の会、国民民主党、そして野党第一党の立憲民主党などですが、いったいどの政党と組むのかというのは、候補者によって変わってくると思います。そのあたりも注目して、この総裁選は見ていく必要があると思います。