【解説】自民党総裁選「フルスペック型」ポスト石破レースにどう影響?

自民党総裁選は党員も含めた、いわゆる「フルスペック型」で行うことが決まりました。ポスト石破レースには、どのような影響が出るのか。日本テレビ・政治部官邸キャップの平本典昭記者が、次の3つのギモンについて解説します。
1.党員票「サプライズ」再来?
2.高市氏…2つの不安材料も
3.なぜ動かない?小泉氏の悩み

──まず、「党員票『サプライズ』再来?」とはどういうことでしょうか。
フルスペック型となったことで、党内からは早速「党員票では高市さんが優位では」という声が出ています。それはなぜか。去年の総裁選、1回目の投票で「党員票」を最も獲得したのが高市さんで109票だったからです。
去年の総裁選で、取材をしていても多くの議員が「最大のサプライズ」としてあげるのが1回目の投票での高市さんが獲得した、この党員票の数でした。票があいた瞬間、会場ではどよめきが起きました。
なぜサプライズと受け止められたのか、それは世論調査との比較で見えてきます。
去年の総裁選の直前の世論調査で、「誰が次の首相にふさわしいか」を聞くと、高市さんと答えた人が13%、これに対して小泉さんと答えた人が21%。世論の人気は、小泉さんが高市さんより高かったんです。
小泉さんと高市さんを比較すると、「世論調査」、一般世論の人気では小泉さんが高い一方で、「党員票」、総裁選で投票権を持つ自民党員に限定すると高市さんの人気が高いので、世論と逆転して「党員人気がこんなに高いのか」という「サプライズ」が去年起きたということなんです。
──その流れを今回も引き継ぐとなると、高市さん優位なのではという見方がありますが、その高市さんに2つの不安というのはなんでしょうか?
1つ目は、この1年の変化です。チーム高市のメンバーが減ってしまったということです。
具体的には、前回の総裁選で立候補に必要な推薦人が20人いましたが、そのうち9人がいまはいないんです。去年の衆院選、今年の参院選で落選するなどしてしまった結果です。
高市さんは去年、1回目の投票で1位になったのですが、実は、推薦人20人の確保には苦労していたようなんです。今回、陣営の中からは「推薦人になってくれた仲間が随分いなくなり、確保できるか難しい面もある」という声も出ています。
2つ目の不安は、今回の総裁選でカギを握るとみられる「石破票」がどこまで獲得できるか、という点です。
去年、石破さんに投票した議員は、今回は石破さんは出馬しないので誰を支援するか、悩む議員が多いと思います。その多くは、石破さんと考えが近い、政策を継承してくれる人に投票するとみられます。高市さんは、石破政権とは距離を置いていました。政権発足直後、石破さんが党役員を打診しましたが、高市さんが断ったこともありました。
石破陣営の幹部だった議員は「石破票は高市さんには流れない。内閣で一緒に仕事をした小泉さんや林さんの方が考えが近い」と述べています。カギを握る「石破票」獲得が見通せないのも、不安要素の1つです。

──そしていま名前があがった小泉農水相ですが、現状、立候補表明はありません。動かないのにはどんな悩みがあるんでしょうか?
小泉さんは、立候補に向けて模索を続けています。陣営の幹部は「本人はやる気だ。準備も進めている」と話しています。
ただ、当の本人は9日も「一致結束するために何ができるか考えたい」と話しただけでした。茂木さんはいち早く立候補表明、林さんも意向を固め、高市さんも準備を加速させ、小林さんも検討を進める中、小泉さんの動きは「静か」に見えます。
ある陣営幹部に話を聞くと、2つ理由を話していました。1つは「農水相としての仕事がある。コメ対策の停滞が許されない中、動きづらい」というんです。もう1つは、石破首相の退陣の経緯と関係があります。退陣の決め手といわれるのは菅元首相と、小泉農水相による働きかけでした。陣営幹部は「石破首相に辞めることを促し、すぐに総裁選に出ると手をあげたら、党の分裂を避けるためでなく、周りからは、自分が首相になるためだったのかとみられてしまう」と話していました。
他の候補の動きが加速する中、チーム小泉はもう少し「考える」時間が続くかもしれません。
──小泉氏の周りでは「本人もやる気」という声もあったので、立候補しないということはさすがにない、とみられているのでしょうか?
いま立候補を模索していると思いますし、準備も始めている。もし出れば、多くの議員が「小泉さん、高市さんの2人が軸となる戦いになる」とみていますし、取材にも小泉さん自身が意欲をにじませていて、出るのではないかという見方が多く出ています。