市議「縮小統合方針なのに、なぜ新しい施設を」
愛媛県西条市が、多目的ホールの建設など2事業の計画について、市議会に諮ることなく国に交付金を申請し、11日、交付決定を受けていたことがわかった。16日に高橋敏明市長が市議会に対し、「進め方が悪く、説明不足だった」と陳謝。市議からは「市民の理解が得られず、申請を取り下げるべきだ」などと厳しい意見が飛び交った。(浜畑知之)
市は5月中旬、民間事業者からの提案を踏まえ、6月25日に2事業の交付金を国に申請し、公表していなかった。高橋市長が今月8日の市議会一般質問で、交付決定の内示を受けたと明らかにし、16日に市議会からの要請を受けて市が意見交換会を開いた。
ホールは、同市朔日市の民有地に、鉄筋コンクリート造りの3階建て延べ1460平方メートルを建てる計画。だんじりの実演やかき夫体験ができ、災害時に避難所として活用する。事業費は16億円を見込む。
もう一つの事業は休館中の温泉施設「椿交流館」の改装で、健康管理を支援する機能を備えた拠点施設とする。事業費9億8300万円。国から今年度の交付金として、ホールに8500万円、改装に3億600万円が決定した。
高橋市長は意見交換会で、「申請期限まで期日がわずかだったため報告せずに進めた」と釈明し、ホールは防災拠点にもなる点などを強調して必要性を主張。これに対し、市議からは「議会軽視もこの上ない」「事業の撤退を視野に入れるべきだ」「市の設備の縮小や統合をする方針なのに、なぜ新しい施設を増やすのか」といった意見が相次いだ。
また、民有地にホールを建設する計画について、「利益供与や癒着を勘ぐらせる」との指摘も出され、高橋市長は否定に追われた。
終了後、高橋市長は取材陣に「今後も市議や市民の意見に耳を傾けたい」と述べるにとどめた。国への申請の取り下げは決定から15日以内となるが、高橋市長は判断について明言を避けた。