川崎市高津区の東急電鉄田園都市線で5日深夜に発生した脱線事故は一夜明けた6日、始発から一部区間で運転を見合わせ、通勤や通学の足に大きな影響を与えた。東京都心と郊外のベッドタウンをつなぐ路線の寸断によって、沿線の利用客は迂回を余儀なくされ、周辺道路は大混雑。事故車両は日没後も撤去されず、一刻も早い復旧を求める声が相次いだ。
「50年以上住んでいるが、こんなことは初めて」。事故現場の近くで暮らす主婦、山口峰子さん(82)は驚いた様子でこう語った。
事故が起きたのは、梶が谷駅の南西約150メートルの地点。衝突した10両編成の2本の電車は重なるように停車し、脱線車両は後方が破損していた。線路上には、復旧にあたる40人以上の作業員の姿がみられた。
梶が谷駅の改札には、「急告」と記された運休を知らせる立て看板が設けられ、駅員らが利用客の対応に当たった。
都内への出社を諦めて在宅勤務に切り替えた会社員、柏木拓さん(41)は「明日までに復旧しなければ、1時間半歩いて出社する」と運転再開を祈っていた。
「道路もだめだ」と話すのは、都内のタクシー運転手の50代男性。事故の影響は周辺の道路にも波及し、「普段は渋谷駅から三軒茶屋駅まで10分で着くのに1時間以上かかった。通常なら空いている道なのに」と渋滞に疲れた様子だった。
田園都市線が乗り入れる東京・渋谷駅のバス停にも振り替え輸送の通勤客らの長い列ができた。
30分以上列に並んだ大学3年の男性(21)は、「普段からよく止まる路線だから早めに家を出ていた」というが、午後1時からの授業には間に合わなかった。帰宅はアルバイト後になるといい、「夜まで止まっていると困る」と戸惑いの表情を浮かべた。
運転見合わせは、日没後も続いた。現場近くに住む会社員の男性(46)は、沿線の溝の口駅から徒歩で帰宅。「復旧しなければ、あすは在宅勤務にしようかと思っている」と話していた。
沿線を利用する男性会社員(28)は「安全体制をもう一度見直してほしい」と要望した。
(永礼もも香、市野澤光)