クマの人里への出没が増える中、捕獲を担う猟友会員の報酬を引き上げる動きが新潟県内で広がっている。会員らは待遇改善を歓迎する一方で、9月から市街地での「緊急銃猟」が認められたことを受け、危険性が高まるとの不安の声も出ている。(徳井観)
1頭捕獲で2万円
県などによると、クマ捕獲の報酬額は、各市町村が地元の猟友会などと協議して決めている。読売新聞の取材では、今年クマの出没が確認された県内24市町村のうち、長岡、柏崎、新発田、阿賀野、魚沼、胎内の6市で報酬の引き上げを今年度行ったか検討中であることがわかった。
新発田市は今年度、出動した猟友会員の日当を3000円から5000円に増額し、緊急銃猟を行った場合は追加で8000円を支払う制度を新設した。同市によると、昨年に地元の猟友会から「緊急銃猟で危険性が高まるから報酬を上げてほしい」との要望があり、責任が増した分、報酬を増額したという。
ほかの自治体も待遇改善を進めている。長岡市は今年度から、通常の時給1500円に加え、クマを1頭捕獲するごとに2万円を支給し始めた。魚沼市も今年度、時給を300円増の1500円に引き上げた。
胎内市は、緊急銃猟を実施した際の時給を2500円とする方針。開会中の10月定例会で関連議案が可決されれば、今年度中にも実施する。通常の出動時の時給1000円も来年度に増額する方向という。
阿賀野市は、来年度から日当の額を引き上げる方向で検討している。同市の担当者は現在の日当3000円を「さすがに安い」と認める。柏崎市も増額を検討しているという。
「危険に見合う待遇を」
猟友会員はこうした動きを歓迎する。下越地方で約50年間クマの捕獲に携わってきた県猟友会北蒲原支部長の石川恒夫さん(76)は「待遇を改善しようという動きが出るのはありがたい」と語る。
石川さんは今年6月、阿賀野市の住宅街や田んぼにクマが出没した際、市や警察と連携しながらクマを人がいない場所まで移動させて捕獲した。活動は約10時間に及んだが、報酬は日当の3000円のみ。「危険に見合った待遇になるよう改善が進んでほしい」と訴える。
担い手 60~70代多く
だが、待遇が見直されても、担い手不足は深刻な状況のままだ。
県猟友会によると、今年3月時点の会員数は2201人。2022年3月時点では2256人だったが、毎年数十人のペースで減少が続いている。多くが60~70歳代で、銃撃でクマを捕獲できる技術を持った会員は限られるという。
クマの捕獲に必要な狩猟免許を取得するには、県などが開催する講習会に参加して試験に合格することが必要で、1年程度を要するとされる。市街地での捕獲は、建物に銃弾が当たらないよう気を配る必要もあり、より高度な技術が求められる。
県猟友会は、クマの捕獲に対応できる人材を確保するため、研修に力を入れている。先月下旬から今月上旬にかけては、緊急銃猟に備えた研修を新潟市西蒲区の射撃場で2回開き、約80人が参加した。同会の池田富夫会長(76)は、「活動はボランティアではない」と強調し、適切な額の報酬が必要との考えを示している。