東京都八王子市の市職員通勤手当の不正受給問題で、市は23日、関与した職員97人、監督責任のある管理職11人の計108人の大量処分を発表した。初宿(しやけ)和夫市長には今年9月まで報告されておらず、長く報告や公表しなかった経緯を第三者による検討会が調べる方針だ。(長谷部耕二)
発表によると、2019年4月~24年9月の期間で、不正受給の総額は915万円だった。都市整備担当部長兼開発・建築担当部長(59)を停職1か月(23日付で依願退職)、男性課長(58)ら10人を戒告の懲戒処分としたほか、19人を訓告、58人を口頭での厳重注意とした。
監督責任については、植原康浩副市長を厳重注意として給料10分の3(3か月)を自主返納、中邑仁志副市長も厳重注意で給料10分の1(1か月)を自主返納する。総務部長ら部長3人、課長6人を厳重注意とした。
記者会見した初宿市長は「市民の信頼を大きく損なう事態となり、心からおわび申し上げる」と陳謝し、副市長らと深々と頭を下げた。
停職の部長は、24年9月まで4年以上にわたり、計37万3556円を不正に受け取った。期間と金額が最大だった男性主査(60)は24年9月までの約5年半で、49万1778円を受給。いずれもバス通勤を申請したにもかかわらず、徒歩で通勤していた。
すでに退職した職員9人のうち、2人は戒告相当、2人は訓告相当、5人を厳重注意相当とした。
この問題をめぐっては、市は昨年10~11月に調査し、同12月に職員97人がバスや電車の定期代計1671万円を返納したが、市は「調査が続いている」として公表せず、初宿市長には今年9月まで報告されなかったという。初宿市長は会見で「返納の事実について、隠蔽(いんぺい)の疑いがある」と指摘した。
弁護士や大学教授らによる第三者検討会が来月に発足し、庁内での隠蔽行為の有無や不正受給の経緯を調べ、来年3月までに再発防止策を含めて結果を公表する。
市によると、08年以降、通勤・住居・扶養手当の不正受給で懲戒処分を受けた職員はゼロだった。初宿市長は「懲戒処分の判断基準に疑義があったので、不正期間の長短などを加えて基準を作り直した」と説明した。住居・扶養手当も不正が認定されれば処分する。
地方自治に詳しい木寺元・明治大学教授(政治学)の話
「八王子市役所の組織統治に問題があり、深刻な機能不全に陥っている。管理職も不正に手を染めており、内部チェックが働いていない。副市長が市長に伝えなかったのも問題だ。行政の信頼失墜につながるため、返納の事実を速やかに公開するべきだった。報道機関の情報公開請求がなければ、隠蔽を続けた可能性もある。住宅手当や扶養手当の不正受給でも、しっかりした対応をとらないと、信頼の回復は見込めないだろう」