【クアラルンプール=三沢大樹】高市首相は26日、マレーシアの首都クアラルンプールで東南アジア諸国連合(ASEAN)との首脳会議に出席した。首相は外交の柱に据える「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」構想を推進していく考えを強調し、ASEANと安全保障や経済、先端技術などでも協力を強化させていく意向を示した。
首相は就任後、国際会議への対面出席は初めて。会議の冒頭、「ASEANと共にインド太平洋地域の平和、安定、繁栄を守り抜いていきたい」と呼びかけ、FOIPを「時代の変化に合わせて進化させていく」と表明した。ASEANが開放性や透明性を確保して地域協力を進めていく独自構想「インド太平洋に関するASEANアウトルック(AOIP)」と連携させる考えも示した。
会議では、AOIPの推進に関する共同声明を採択した。FOIPとAOIPが本質的な価値観を共有し、法の支配に基づく国際秩序に寄与することを確認した。力による現状変更を試みる中国をけん制する狙いがある。
首相は会議で、中国を念頭に、南シナ海での威圧的な行動に「深刻な懸念」を示したほか、台湾海峡の平和と安定の重要性を強調した。政府安全保障能力強化支援(OSA)を使って海洋安全保障強化を後押しする方針を打ち出したほか、人工知能(AI)や量子などの先端技術で共同研究を推進する考えも伝えた。
首相はマレーシア、フィリピン、オーストラリアの首脳とも個別に会談した。フィリピンとは、自衛隊と比軍が食料や燃料などを融通し合うことを可能とする物品役務相互提供協定(ACSA)の実質合意を歓迎。豪州とは、重要鉱物の供給網での協力を確認した。
首相は一連の日程を終え、「ASEAN諸国や同志国との連携強化を確認できたのは有意義だった」と記者団に語った。