クマの生態に異変? 冬眠遅く…12月末まで出没の可能性も 「イベント中止」相次ぐ “遭遇リスクマップ”とは【なるほどッ!】

28日は盛岡市中心部にクマが現れましたが、今や市街地でも出没する事態になっています。これを受けて、各地で秋のイベントが続々中止になっています。専門家によると人を恐れないクマも多く、冬眠が遅くなり、12月末まで出没する可能性もあります。
森圭介アナウンサー
「28日もクマが出没しています。岩手・盛岡市の中心部にある銀行の地下駐車場に1頭のクマが入り込んだということです」
「付近では27日夜から28日未明にかけ、親子連れのクマが出没して2頭が逃げました。そのうちの1頭が地下駐車場に入るのを警察が目撃していたということです。この地下駐車場を閉鎖した後にクマは捕獲され、ケガ人はいないといいます」
「このように、もう今や山間部だけではなくて市街地にも熊が出てきています。こういったクマの影響で、全国の屋外で開催されているイベントが中止となる事態となっています」
森アナウンサー
「まずは北海道・北斗市。非常にきれいなライトアップがある『北斗紅葉回廊』ですが、会場の周辺でクマの痕跡が見つかり、17日から開催予定だったライトアップが中止になったということです」
斎藤佑樹キャスター
「人の命が圧倒的に大事ですから、致し方ないことですよね」
森アナウンサー
「ライトアップになると、夜がメインの時間帯になってくると思いますが、屋外で暗い時間となるとクマの目撃や接近に気づきづらくなるというリスクもあるので、こういった対処になったのかもしれません」
「クマの目撃情報と被害が非常に多い秋田県。大仙市で31日に開催予定だったハロウィンのイベントについて28日、中止が発表されてしまいました」
「ライトアップされた『旧池田氏庭園』で仮装などをして楽しむイベントだったということですが、クマの目撃が増えているということから、中止の判断をしたということです」
「宮城・仙台市の仙台第一高等学校では、16日に開催予定だった『強歩大会』が中止に。コロナ禍でも中止をすることなく続けてきた伝統行事で、今年は60回目の記念行事でした。苦渋の決断だったということですが、安全を最優先に中止となりました」
「仙台を流れる広瀬川の近くでもクマが目撃されたということもありました」
「イチョウが非常にきれいに彩られている写真があります。福島市のあづま総合運動公園で22日から開催予定だったライトアップが中止になったということです。地元では有名なんですね?」
直川貴博アナウンサー
「市街地から車で10分ぐらいの距離で、秋の風物詩として、行きやすいところにあるからこそ人気でした」
森アナウンサー
「屋外で、さらにはライトアップで暗い時間帯になってくるところは共通しています。富山・入善町では26日に開催予定だった駅伝競走大会は、コース周辺にクマの目撃情報が相次いだということで中止になりました」
「屋外でのイベント、スポーツやイルミネーションとさまざまありますが、こういったものの中止が相次いでいます」
森アナウンサー
「クマの被害を受けた自治体では、地域の経済を停滞させないために、対策も開始されているといいます。北海道・福島町では今年7月に、クマによる死亡事故がありました。この死亡事故をきっかけに開催予定だったイベントがすべて中止になりました」
「飲食店には営業時間の短縮の要請などはしていなかったものの、外出の自粛を呼びかけていたそうなので、結果として外を歩く人が減ってしまい、お店などを訪れる方も減ってしまうということで、経済を回すための措置を講じました」
「全町民には町内の飲食店やスーパーなどで使える1万円分の商品券を配布し、町内の飲食店と宿泊業者にはそれぞれ10万円の支援金を支給したということです。クマの(直接的な)被害はもちろん、経済的にも観光業にも影響が出てきているということですね」
山﨑誠アナウンサー
「参加して楽しみたいという方はもちろんですが、このために準備してこられた方々や運営側の方にとっても痛手ですし、切ないことですよね」
森アナウンサー
「(クマ対策では)政府の対応も発表されました。人的被害はもちろんですが、社会的な影響もかなり大きくなってきましたね」
鈴江奈々アナウンサー
「秋の行楽シーズンは人の動きがより活発になります。このタイミングでこういった被害が相次いでいるということで、より影響が拡大しないか心配されますね」
森アナウンサー
「クマの対策というのが重要になってきますよね」
瀧口麻衣アナウンサー
「早急にクマの対策は進めていってほしいなと思いますね」
森アナウンサー
「遭遇した時にどうすればいいのか、クマ鈴などの話は(every.でも)してきましたが、対策を打つにはやはりクマの生態を知るのが最も必要なことになってきます。クマの生態に詳しい岩手大学農学部の山内貴義准教授に、今年のクマについて聞きました」
「クマは12月頃に冬眠して、3月頃に起きるということです。12月末まで市街地などに出没して、冬眠の時期が遅くなるクマが出てくる可能性があると山内さんは話しています」
「今年はドングリなどのエサが凶作で、エサ不足で人里に降りてきたと言われています。エサがないと早く冬眠するんです。逆に言うと、人の生活圏に近いところに生息しているクマは、(食べるものがあるから)冬眠をするまで時間がかかる」
「つまり、エサを探して遅くまで出没する可能性があるといいます。探せば見つかるのであれば、まだ冬眠をしないということなんでしょうか。一度人里に降りてくると、その集落全体をエサ場だと認識するクマの習性があると言われています」
「さらに今年は人間の食べ物などに執着をしているクマが多く、人に慣れている、人を恐れないクマも多いということです。柿の実に誘われてクマが降りてくることもありますが、クマが柿の実に依存すると、なかなか冬眠しない可能性もあるということです」
「実際に現段階で市街地にまで現れているクマがいることを考えると、冬眠が遅くなる、ずっと活動し続けるクマが増える可能性が今年はあるということです」
森アナウンサー
「では、どうすればいいのか。対策も聞きました」
「山下准教授によると、まずクマを寄せつけないのが重要です。そのためには、ゴミを放置しない。ゴミステーションがクマに襲われることもありました。人間にはゴミかもしれませんが、クマにとっては可食部があると、誘い出されてしまうという部分もあります」
「さらには、家の周りの見通しを良くするために、草刈りすることも大事だそうです。家の中にクマがいたというニュースもお伝えしました。防犯対策と同じく、家の戸締まり、車庫や倉庫などの施錠も忘れずに行ってほしいと、山内准教授は言っていました」
「また今年はこれに加えて、クマの目撃情報が出ている地域では、1人で暗い時間に外出しないでほしいとも言っています。野外で夜間に行われるイベントは(各地で)中止になっていますが、こういったことに注意していただきたいと思います」
「最新のクマの情報などが、自治体などからも出ていることがあるので、自治体ホームページなどもチェックしてほしいと話しています」
「さらに連日のクマの被害を受け、気象予報サービスを提供する日本気象株式会社が、AI技術を使った『クマ遭遇リスクマップ』を開発しました。ツキノワグマの生息域である本州全体を対象としたエリアで、どこに危険が潜んでいるのか可視化しているものです」
「(マップ上で)オレンジ色や赤っぽくなっているところは遭遇リスクが高く、いつクマが出てもおかしくないということを指しています。過去のツキノワグマの目撃情報や、山林・山地といった地形などのデータをもとに、遭遇しやすい場所の特徴を分析しています」
「山間部以外の人の生活圏のエリアで、クマとの遭遇のリスクを見ることができます。お住まいの方はもちろん、まだまだ行楽シーズンが続いているので、観光や旅行で訪れる先の参考情報にも使ってほしいということです」
「今後はクマのエサとなるドングリの実り具合なども含めて、リスクの予測ができないか開発を進めていくということです」
(2025年10月28日『news every.』より)