パイプ銃自作の経緯明らかに 火炎瓶襲撃は断念、「銃密売人」には小ばかにされ…山上被告

令和4年7月に起きた安倍晋三元首相銃撃事件で、殺人などの罪に問われた山上徹也被告(45)の裁判員裁判の第2回公判が、29日午後1時10分から奈良地裁(田中伸一裁判長)で開かれる。事件当日現場にいた目撃者の証人尋問などが予定されている。被告はなぜパイプ銃を自作するに至ったのか。前日の初公判で行われた検察側の証拠調べを通じ、その経緯が少しずつ見えてきた。
動機は母親が入信し、総額約1億円もの巨額献金を行った旧統一教会(現世界平和統一家庭連合)への恨みだった。
愛知で総裁狙うも…
検察側の主張によると、被告は教団最高幹部の殺害を計画。令和元年10月、教団の韓鶴子(ハンハクチャ)総裁が来日した際、火炎瓶を手に愛知県に向かったが、結局実行できなかった。
「より確実に殺害できるものは何か」。それから拳銃の入手を試みるようになった。
被告の自宅から押収したパソコンには、拳銃売買をめぐるやり取りが残されていた。翌年10月9日付、売人からのメッセージ。「薬、武器どんなものでも用意します」
被告は「できれば小型で破壊力があるもの」と返信した。被告は拳銃1丁と実弾1発を注文。仮想通貨のビットコインで20万3千円相当を売人に送金した。
だが、数日たっても拳銃は届かない。しびれを切らした被告は同18日、「明日発送がないなら警察に行く」と警告のメッセージを送った。
「お前と遊びたいんじゃない」怒りのメッセージ
売人からは「こちらは海外拠点であり、結構です。お疲れさまでした」と小ばかにするような返信が来た。
「俺は拳銃が欲しいのであって、お前と遊びたいんじゃない」。そう怒ってはみたものの、後の祭りだった。痛い目を見た被告はここから、自作銃の作成に動き始める。
ネット情報を参考に、弾丸を発射する仕組みの手製パイプ銃の製造に着手。同年12月20日ごろ以降、奈良市内のホームセンターやネット通販で計847点、約60万円分の材料を購入し、奈良市内のアパートなどで試作を重ねた。
試射の様子を動画撮影
犯行当日までに作った手製のパイプ銃は延べ約10丁。28日の初公判では、被告がパイプ銃の性能を確かめるため撮影した動画計8本が法廷で流された。
奈良市内の山中で、被告が20~30ミリのベニヤ板を目がけ、数メートル先から銃を発射する様子が記録されており、リロードしようと何度か引き金を引くも、空打ちとなり「なんや…」と残念そうにつぶやく音声もあった。