「コメ大臣」から「クマ大臣」に…小泉進次郎防衛相は早くも正念場、党関係者は「本当なら地元でトランプ大統領と…と思ってるのでは」

先週、防衛相に就任したばかりの小泉進次郎氏に、早くも正念場がやってきた。全国で被害が深刻化しているクマ対策のため、秋田県に自衛隊を派遣する方針になったのだ。今年度は死者数が全国で過去最多の10人(10月28日時点)となるなど、一刻を争うクマ問題。農水相時代には「コメ担当大臣」として備蓄米放出を進め、一定の成果を上げた進次郎氏だが、「クマ担当大臣」としては新たな壁にも直面。彼は国民の安全を守ることができるか。
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防衛相に就いたものの、重要な防衛政策の意思決定にはタッチできず?
総裁選には敗れたものの、再び首相の座を目指すうえでは欠かせない安全保障分野の経験を積める防衛相に就いた進次郎氏。さっそく防衛費の増額を視野に入れた安全保障3文書の改定前倒しなど、高市氏肝いりの重要課題に深く関わるかと思いきや…。
「第二次安倍政権の再現をねらう高市首相は、外交や安保の総合調整にあたる国家安全保障局長に、安倍政権時代に『自由で開かれたインド太平洋戦略』の策定に携わった市川恵一氏を充てました。市川氏は駐インドネシア大使となる人事が発令されたばかりでしたが、高市氏たっての希望で呼び寄せたとされています。安倍氏にならい、防衛政策を官邸側で主導していきたい意図が透けてみえます」(全国紙政治部記者)
そのため永田町では、進次郎氏は防衛相に就いたものの、安保3文書改定などの重要な意思決定にはそれほど関与できないとの見方が出ている。
本当なら地元・横須賀でトランプ大統領と…
総裁選で大本命と位置付けられながらも、高市氏にまさかの大逆転を許し、防衛相としても思うようには動けないとみられている進次郎氏。
自民党関係者は「『本当なら、今頃地元でトランプ大統領との晴れ舞台のはずだったのに……』と思っているのではないでしょうか」と心境を推し量る。
進次郎防衛相は、10月29日に来日中の米国のヘグセス国防長官と会談。防衛費を国内総生産(GDP)比2%に増額するという政府目標の達成時期を2027年度から2025年度中に前倒しすることや、安保3文書の改定を検討し防衛力強化を目指すことなどを伝達した。
ただ、いっぽうの高市首相は前日の28日、トランプ大統領とともに米海軍横須賀基地を訪問。2人はともに原子力空母「ジョージ・ワシントン」に乗り、トランプ大統領は数千人の兵士を前に演説した。トランプ大統領が高市首相を「勝者で日本初の女性総理だ」と持ち上げる映像は、ニュースでも何度も取り上げられた。
「外務省は来日時のトランプ大統領の訪問先について、高市氏が首相に決まる前から米国側と調整を重ねていたので、『横須賀を選挙区とする進次郎首相が、地元の米軍基地でトランプ大統領と親密な関係をアピールする』という場面を想定していたのでしょう。進次郎氏も『本当なら今頃地元・横須賀でトランプ大統領の隣に…』と心のどこかで感じているのでは」(自民党関係者)
当面は「クマ担当大臣」、コメのように成果を上げられるか?
そんな地元での格好のアピールの機会を逸した進次郎氏の前に立ちはだかったのが、東北を中心に国民の生活を脅かすクマ問題だ。
高市首相がトランプ大統領との首脳外交に臨んでいた28日には、秋田県の鈴木健太知事が防衛省を訪れ、進次郎氏に直接、クマ対策への支援を要望。
進次郎氏は「早急に対応策を練り、安全と安心を取り戻す」と述べ、その日の夕方には陸上自衛隊の連絡員らを秋田県に向かわせた。自衛隊と秋田県側で、自衛隊受け入れに向けた協議がさっそく開かれたのだった。
「クマ担当大臣」として脚光を浴びる形となった進次郎氏だが、クマ対策は新たな正念場ともなりそうだ。
「コメ政策と同様、国民の関心が高く、生活に直結するテーマのため、会見で記者とのやりとりも増えるだろう。コメ政策のように、大きな失言もなく乗り切れればいいが、クマ問題は人命もかかっているため、失態を犯してしまうと責任も重くなる」(全国紙政治部記者)
進次郎防衛相ができることは限定的か
さらに、現状では自衛隊が対応できるクマ対策が限定的であることも、進次郎防衛相の頭を悩ませる。
今後、自衛隊はクマを捕獲するため、箱わなの運搬・設置・見回り、駆除したクマの解体処理などの後方支援を行なう見込みだ。だが自衛隊法の規定では、クマの輸送はできるものの駆除に関する規定はないため、自衛隊が銃を撃つなどしてクマを駆除することは想定されていない。
「今後、他県からもクマ対策の後方支援を求められる可能性がありますが、進次郎防衛相にできることには限界がありそうです。備蓄米放出でコメ価格を下げられたのとは異なり、すぐに目立った成果が出るかは分かりません」(全国紙政治部記者)
自衛隊ができるクマ対策の限界に「今後、法体系や対応のあり方をどうするかということは、防衛省だけではなく政府全体で考えていく必要性も出てきている」とも述べた進次郎防衛相。各地で人を襲うクマと、息の長い戦いになりそうだ。
「コメ担当大臣」とは異なる難しさがあるなか、クマから人々を「防衛」できるか、進次郎防衛相の正念場が続きそうだ。
取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班