「悪意ある記事」と反論の藤田共同代表に橋下徹が“公開説教” 維新トップに広がるカネの火種

“与党入り”した日本維新の会に、早くも「重大疑惑」が直撃している。「しんぶん赤旗日曜版」が10月29日配信の電子版で報じたのは、同党の藤田文武共同代表(44)の「公設秘書への税金還流」疑惑だった。藤田氏は自身のXで反論しているが、維新創業者の“あの男”も断罪する始末で。
【独自入手】「ベンチャー政党から全国政党へ」藤田文武共同代表が自著の宣伝をする党のチラシ
維新共同代表に浮上した「政治とカネ」の問題
「赤旗日曜版」の報道によれば、藤田氏側は2017年6月から2024年11月にかけて、〈ビラ印刷費〉などの名目で、自身の公設第一秘書が代表を務める会社に約2100万円を支払っていたという。
さらに、その会社から公設秘書に、年間720万円の報酬が支払われていた。同紙は、藤田氏による「公設秘書への税金還流」の疑いを指摘している。
これに対して、藤田氏は10月30日のXで、〈悪意のある税金環流のような恣意的な記事です〉と反論。その上で、〈すべて実態のある正当な取引であり、専門家にも相談の上で適法に行なっているもの〉と主張した。
ただ、藤田氏は反論とあわせて、X上で、取材を担当した「赤旗」の記者の名刺も公開。記者を“攻撃”するような、あまりに感情的な振る舞いに、「いまや与党なのだから、メディア対応に品格が求められるはず。やられたらやりかえすという“維新ノリ”は慎むべきだ」(自民党関係者)といった批判もあがる。
そして、維新共同代表に浮上した「政治とカネ」の問題に、あの男が黙っていなかった。
〈このような公金扱いを続ける維新の改革の声に国民は応えないだろう。なぜ藤田氏側の会社を通す必要があるのか〉
〈これは政治家がよくやりがちな選挙を利用した公金着服のビジネスモデルの疑いあり。(中略)徹底解明が必要だ〉
10月31日に自身のXで、藤田氏を厳しく追及したのは、維新創業者の橋下徹氏(56)である。維新創業者と、現在の事実上のトップの“大モメ”。その背景には、橋下氏と維新国会議員団が長らく抱えてきた、確執が存在している。
藤田氏は筑波大体育専門学群(体育学部)卒業後、高校の保健体育科講師などを経て、スポーツジムや整骨院を運営する「KTAJ」を起業。会社名は、藤田氏の座右の銘である「敬天愛人」(天を敬い、人を愛すること)からとっているという。
同社ホームページで藤田氏は、参政党の神谷宗幣代表(48)も師事する東洋思想家の林英臣氏を、“人生の師”と仰ぎ、経営理念を学んだと説明している。
2012年に「維新政治塾」1期生として入塾。2019年の衆院選に、大阪12区から出馬し、初当選した。その後、2021年に当選2回ながら、維新の幹事長に抜擢されたのだった。
藤田氏を「馬場の威を借る茶坊主」と呼ぶ人も…
藤田氏の抜擢のウラにあったのが、当時の馬場伸幸代表(60)との深いつながりだ。
「馬場氏への忠誠心は極めて高く、藤田氏自身、『(スピード出世は)馬場さんの飲み会の誘いを断らなかったから』と冗談交じりに周囲に話していた。国会で馬場氏を念頭にしたヤジが飛んだときには、『いらんこと言うなよ、ほんまに』と色をなしてブチ切れた。あまりのゴマすりぶりに、党内では藤田氏を“馬場の威を借る茶坊主”と呼ぶ人もいます」(維新秘書)
藤田氏の後見人的存在の馬場氏は、維新国会議員の重鎮であるが、橋下氏とはかねてより折り合いが悪い。馬場氏はもともと自民党の堺市議の出身で、松井一郎元大阪府知事(61)と関係は深いとされる。ただ、「府議経験はなく、橋下氏と大阪の改革をともにした経験はない」(維新府議)。
“身を切る改革”を信条とする橋下氏は、維新国会議員団が政策活動費名目で支出してきた高額な飲食費を批判、馬場執行部を念頭に、「永田町の飲み食い政治」と糾弾してきた。
そんな藤田氏だが、幹事長時代に『40代政党COO 日本大改革に挑む』という自著を党のチラシで宣伝したこともあったという。
「党のチラシに藤田氏の本の宣伝が入っていたので驚きました。維新の秘書団が動員され、JR新橋駅前でこのチラシを配布したこともあり、『藤田さんは、ベンチャー起業家出身をアピールしたいのか何なのかわからないが……』とひんしゅくを買っていました」(維新関係者)
その後、馬場執行部は2024年に退陣し、吉村洋文共同代表(50)と前原誠司前共同代表(63)の体制となった。しかし、2025年の参院選後で7議席の獲得に終わると、馬場氏に近いメンバーが代表選を求める署名活動を開始。事実上の“前原おろし”とも言われた。
「今年8月に発足した新体制では、藤田氏が共同代表に就任。馬場氏と近い遠藤敬国対委員長(57)が復帰するなど、“馬場派”の復権を印象づけました。橋下さんは“馬場一派”が維新をダメにしたと思っているふしがある。面白く思っていない面はあったのでしょう」(前出・維新府議)
維新は所属議員の不祥事の多さで知られてきた過去がある。それは、今やタッグを組む自民党にとってもリスクとなり、高市政権の支持率に影響しかねない。維新トップを巡る重大疑惑は、不吉な予兆を感じさせる。
高市早苗総理(64)に近しい自民党の閣僚経験者は、「政権の支持率が高いうちに解散総選挙をしたほうがいい」と焦りを募らせている。
取材・文/河野嘉誠 集英社オンライン編集部ニュース班