家族第一の夫「返してほしい」実刑判決受け遺族が会見 首都高6人死傷事故

首都高速道路でトラックを追突させ、6人を死傷させた被告に4日、実刑判決が言い渡されたことを受け、事故の遺族らが東京・霞が関の司法記者クラブで会見した。遺族らは判決に一定の理解を示しつつも、「主人を返してほしい」と今も癒えぬ悲しみや被告に対する怒りを語った。
事故で亡くなった杉平裕紀さん=当時(42)=の妻、智里さんは判決を受け、「満足という言葉は一切言うつもりもないし、思ってもいない」と前置きしつつ「私たちが頑張ったことが伝わった、形になったかな」と口にした。
智里さんによると、裕紀さんは息子と娘のお弁当を毎朝早起きして作ったり、休みの日は家族との時間に充てたりと、家族のことを考え、一緒に過ごす時間を大切にしてくれる人だった。家族旅行では運転前に仮眠を取ってから家族を車に乗せるなど、安全運転には特に気を付けていたという。
対照的に、風邪の症状や睡眠不足がある中で運転して事故を起こした降籏紗京被告に対し、智里さんは「ただただ主人を返してほしい。それができない中で求めるものはない」と収まらない怒りを語る。
「主人が返ってこない中、苦しみが変わることはない」としながらも、大川隆男裁判長が判決言い渡しの後、「遺族の深い悲しみと怒りの陳述を何度も思い出して心に刻み、逃げることなく考え続けてほしい」と説諭したことに言及。「私たちの気持ちを言ってくれて心を打たれた」とも明かし、「同じような遺族の方々が苦しい思いをしないように、今回の判決をもって(社会を)少しずつ変えていけたらいいなと思う」と話した。
亡くなった船本宏史さん=当時(54)=の妻、恵津子さんは「どんな判決が出ようと主人は帰ってこない。今日が終わりではなく、私たちの苦しみは一生続く」と涙ながらに語った。また、全てのドライバーに対し、「ハンドルを握った時点で守らないといけない人がいることを考えて交通ルールを守ってほしい」と訴えた。(弓場珠希)