26年前、名古屋市西区で女性が殺害された事件。逮捕された安福久美子容疑者(69)は、別々の大学に進学した後も被害者の夫に好意を寄せていました。
職場で出会った2人が結婚したのは事件の4年前でした。2人の間に生まれた息子を抱く高羽奈美子さん。この映像が撮影された約半年後、刃物で刺され殺害されました。
現場は名古屋市西区の自宅アパート。土曜日の白昼に起きた事件でした。当時2歳の息子・航平さんを残し、命を絶たれた高羽さん。2年間だけ綴られた育児日記は、喜びであふれていました。
(育児日記の内容) 「なんて愛嬌のある子なんでしょ。超プリティ」 「乳離れ…昼間はほとんど飲まず。ちと悲しい」
未解決のまま月日は流れ…
幸せな日常を奪った犯人は一体、誰なのか。わからないまま月日は流れていきました。事件発生から10年経った2009年。小学6年生になった息子・航平さんは、仏壇の前で…
(航平さん 当時小学6年 2009年) 「『元気だよ』って言った。ちょっと長く手を合わせた」
(奈美子さんの夫 悟さん 2009年) 「もし犯人が僕とか航平に対する恨みで奈美子を殺したとしたら『決してそんなことでは目的は達せられない』とアピールしたいと思った」
悟さんは当時15年だった殺人事件の時効撤廃を求める運動にも参加。そして事件から11年後の2010年、殺人事件の時効は撤廃されたのです。
払い続けた家賃は“2200万円超”
事件現場の部屋はずっとあの日のまま。悟さんは事件後転居しましたが、現場のアパートの家賃は払い続けていました。理由は犯人が捕まった際、現場検証を行うため。
事件から四半世紀が過ぎ、悟さんが毎年支払い続けた家賃の総額は2200万円を超えていました。
(悟さん 2019年) 「これが犯人の血なんですね」
玄関に残されていたのは犯人の血の跡。警察が鑑定した結果、血液型はB型で目撃情報などから当時40代くらい、現在60代から70代くらいの女とみられていました。
事件は急展開…10月30日に1人で出頭
そして10月31日。
(愛知県警の会見) 「発生から約26年の時を経て、被疑者を殺人罪で通常逮捕しました」
警察は名古屋市港区のアルバイト・安福久美子容疑者(69)を逮捕しました。
安福容疑者は10月30日の午後、警察に1人で出頭。現場に残された血痕とDNA型が一致したため、逮捕に至りました。
安福容疑者は当初、警察にDNAの提出を拒否していましたが、出頭の直前にようやく応じ、これが逮捕の決め手になりましたが、こんな供述も。
「ことし8月に警察が来て、捕まってしまうことを覚悟した。被害者に対して申し訳ない」
「喫茶店でしくしく泣かれて…」
安福容疑者は悟さんと高校時代の同級生で、悟さんは好意を寄せられていたといいます。
(悟さん) 「だからびっくりした。彼女(安福容疑者)が犯人だと聞いて。『何で?』と思いました」
2人は別の大学に進学しましたが、安福容疑者は悟さんが通っていた愛知県豊橋市の大学に来たこともあったといいます。
(悟さん) 「女性(安福容疑者)が1人ぽつんと(部活の)練習が終わるのを待っていて。『付き合ってほしい』みたいな依頼だったと思うんですけど『ここじゃあれだから』と喫茶店に行ったと思うんですね。喫茶店で(安福容疑者に)しくしく泣かれて」
悟さんは高校時代と同じくこの時も交際を断っていて、それから約20年後の1999年6月に行われた、高校の部活のOB会で再会します。
(悟さん) 「結婚していてバリバリ仕事頑張っていると、自分でアピールするくらいだから(印象が)すごく変わったなって」
部屋の包丁が使われた形跡はなく…容疑者が持ち込んだか
OB会から5か月後、名古屋市西区のアパートで事件が起きます。
当時2歳の息子と部屋にいた高羽奈美子さんは、安福容疑者とは面識がなかったとみられ、首などを刃物で刺され殺害されました。
アパートの部屋の包丁が使われた形跡はなく、警察は安福容疑者が刃物を持ち込んだとみています。
事件が起きたのは土曜日の白昼。当時、部屋の机に食べかけのみかんやカップ麺が残されていて、高羽さんがきちょうめんな性格だったことから、警察は来客を予期していない状況で突然襲われたとみて調べています。