愛知県名古屋市で26年間、未解決だった殺人事件の容疑者が逮捕されてから、1週間がたちました。北九州市若松区でも、24年間、未解決のままとなっている事件があります。遺族は「次はうちの番」と、一日も早い解決を願っています。
仏壇に供えられた1杯のコーヒー。生前、娘が好きだった飲み物です。北九州市に住む永野弘子さん(81)は24年前、大切な娘の命を突然奪われました。
■永野弘子さん(81)
「優しい子でしたよ、本当にね。私の子どもでいいのかなというくらい優しくて、立派すぎました。」
当時34歳だった永野さんの娘、関岡晴美さん。2001年6月29日、北九州市若松区青葉台南の自宅で、何者かに胸や背中などを刃物で刺され死亡しているのが見つかりました。
その後、現場から3キロ離れたスーパーのATMでは、防犯カメラに映る人物が関岡さん名義のカードで現金およそ50万円を引き出していました。
■永野さん
「何かありましたら、若松警察署まで連絡ください。」
永野さんは毎年、事件発生日に情報提供を呼びかけ、チラシを配ってきました。なぜ娘の命が奪われないといけなかったのか。事件は24年がたった今も未解決のままです。
手がかりの一つとなるのは防犯カメラに映る人物です。顔の部分は暗く、これまで判別はできませんでした。
しかし、県警はことし、事情を知るとみられる人物の似顔絵を公開しました。防犯カメラの映像を解析したのは、九州工業大学大学院の森口哲次准教授です。
■九州工業大学大学院 工学研究院・森口哲次 准教授
「研究用に使っている2つの解析ソフトを使って解析したところ、ちょっと口や鼻が浮かび上がってきました。」
ことし3月、福岡県警の依頼を受けた森口准教授は、1か月ほどかけて映像を解析。黒い部分から浮かび上がっていた風貌をもとに似顔絵を描きました。
■森口 准教授
Q.何十代くらい?
「フードをかぶっているし、はっきりしません。言えることはかなり細面、ちょっときりっとした顔立ちなのかなと。丸顔ではないというのが大体分かります。」
国籍や性別など細かい部分までは判明できませんでしたが、新たな似顔絵によって犯人像に迫ることができるのではないかと永野さんは期待を寄せます。
■永野弘子さん
「私、願っていたんです、この24年間。フード付きのカッパを着た犯人の顔が出てくるようにと、私、願っていましたよ。逮捕に1歩も2歩も近づいたような気がします。」
さらに永野さんを勇気づける出来事がありました。
■愛知県警会見
「本日、発生から約26年の時を経て、被疑者を殺人罪で通常逮捕しました。」
1999年、愛知県名古屋市のアパートで高羽奈美子さんが殺害された事件。未解決のまま、まもなく26年がたとうとしていた中、10月31日、容疑者の女が逮捕されました。
このニュースを見て「希望の光」を感じたという永野さんは、真っ先に娘の晴美さんに報告しました。
■永野さん
「次はうちの番よって。待っててねって。絶対にうちもその日が必ず来ると、確信を私はその時、持ちました。」
永野さんは10月から、福岡・佐賀で未解決事件に苦しむ被害者や遺族が悩みを共有しあう場「有志の会」の一人として、活動を始めました。
■永野さん
「一番の願いは、もちろん犯人が捕まって、解決していただくのが一番です。本当に私も高齢なの。だから一日も早い解決を願います。ただそれだけ。」
大切な娘の命が奪われてから24年。その願いを胸に永野さんは前を向き続けます。
若松警察署は事件についての情報提供を呼びかけています。電話番号は093-771-0110です。
福岡県警が把握している県内で発生した未解決事件は、少なくとも18件あります。
1998年、北九州市若松区で高齢女性が殺害された事件。
2000年、久留米市で自衛官の男性が殺害された事件。
2001年、福岡市東区で高齢の夫婦が殺害された強盗殺人事件。
2010年、福岡市西区の能古島などで切断された女性の遺体が見つかった事件。
2022年、九州大学箱崎キャンパスの跡地で切断された身元不明の男性の骨が見つかった事件。
これらの未解決事件について、福岡県警は「何か情報があれば、ささいなことでもいいので連絡をしてほしい」と呼びかけています。
※FBS福岡放送めんたいワイド2025年11月7日午後5時すぎ放送