令和4年7月の安倍晋三元首相銃撃事件で、奈良地裁で13日に開かれた山上徹也被告(45)の第7回公判では、被告の母親の証人尋問が行われた。母親は法廷で事件について謝罪する一方で、被告が恨みを募らせ、犯行動機になった旧統一教会(現世界平和統一家庭連合)との関係について、現在も「信仰している」と明かし、入信の経緯などを語った。
「本来は事件が起きたとき、すぐにでも謝罪すべきでしたが、なかなかできませんでした。次男徹也が大変な事件を起こし、心よりおわび申し上げます」
証人尋問の冒頭、母親は声を震わせてこう謝罪した。証言台の周囲には遮蔽板が設置され、被告からは母親が見えるが、傍聴席から様子をうかがうことはできなかった。被告は証言する母親に時折、視線を向けていた。
弁護側は証拠調べで、母親が平成5年以降、事件までに30回にわたって教団本部のある韓国へ渡航していたと指摘。母親は証人尋問で、弁護側から「信仰している宗教はありますか」と問われると、「世界平和統一家庭連合です」とはっきりとした口調で述べた。
母親によると、入信は3年。昭和59年に夫が自殺し、62年に被告の兄である長男が脳の腫瘍が原因で失明するなどして心を痛めていたとき、自宅を訪問した若い女性に勧誘された。そこで家系の問題を指摘され、救済を求めるようになった。
献金しなければ「長男の命がどうなるか分からない。(金よりも)あの子の命を守りたいと思った」と振り返り、夫の生命保険金のうち5千万円を、入信からわずか数カ月で教団に納めた。
その後も献金を続け、平成10年に母親の父が亡くなった後には家などを売却し、さらに4千万円を教団に送った。
当時被告は高校3年で大学受験を控えていたが「学校よりも献金することが大事」「(子供の将来について)なにか道があるだろうと思った」と話した。
被告は母親の献金によって家庭が崩壊したとして教団を恨み、最終的にその矛先を安倍氏に向けたとされる。量刑判断上、被告の生い立ちをどの程度考慮すべきかが争点になっている。