大阪の当番弁護士4割減で「緊急事態宣言」…報酬「割に合わない」「独自ルールでやる気そがれる」

逮捕直後の容疑者の勾留先に弁護士を派遣する「当番弁護士制度」を巡り、大阪弁護士会の昨年の登録者が5年前の2019人から4割減り、1196人に落ち込んでいる。登録するかどうかは各弁護士の自由で、同会は今年7月、会長名で会員の全弁護士に「緊急事態宣言!!」と題したメールを送ったが、登録者数は低調なままだ。
制度は、都道府県単位の弁護士会がそれぞれ運営している。大阪弁護士会の場合、毎日、登録弁護士が交代で待機。逮捕直後の容疑者やその親族の要請を受け、一度だけ無料で勾留先へ接見に行き、刑事手続きを説明したり、取り調べへの対応について助言したりする。
同会では、全会員に占める登録者の割合(登録率)が2019年の43・4%から昨年は23・8%に減少。登録率の低下は全国的な傾向だが、昨年の全国平均(32・3%)を大きく下回った。
当番弁護士は、容疑者に接見した場合、そのまま国選弁護人となるケースが多い。国選弁護人の報酬は、日本司法支援センター(法テラス)が基準を定めており、容疑者に資力がある場合を除き、国が負担している。
複数の弁護士によると、報酬は、当番弁護士として接見した場合、交通費を含め1万円程度。国選弁護人については、1審判決まで担当して15万円前後という。ある中堅弁護士は「手間と時間がかかる上、他の依頼が後回しになることも考えると割に合わない」と嘆く。
大阪弁護士会には、弁護士会館の維持費用などとして国選弁護の報酬の5%ほどを同会が徴収する独自ルールがあり、中堅や若手の弁護士は「独自ルールでさらにやる気がそがれる」と反発している。一方、ベテラン弁護士の一人は「報酬ではなく、社会奉仕の精神で取り組むべきだ」と語った。
同会は7月下旬、森本宏会長名で全会員約5000人に「緊急事態宣言!! 助けて!!刑事当番!!」とするメールを送信。「制度が危機に瀕(ひん)しています。あなたの助けが必要です」と呼びかけたが、あまり効果はなかったという。
現時点で、当番弁護士の派遣に影響が出ているわけではないが、このまま登録者の減少が続けば、制度が立ち行かなくなる恐れがある。同会の担当者は「会員の負担を減らす方策を検討したい」と語る。