高市政権に新たな火種だ。林芳正総務相に「政治とカネ」の問題が浮上している。
問題を最初に報じたのは「週刊文春」(11月13日号)。昨秋の衆院選を巡る、林陣営の「選挙運動費用収支報告書」には、計269人に約316万円の「労務費」の支払いが記載されているという。支出先は主に林氏の選挙区(山口3区)内の住民だ。
不自然なのは、うち123人に「ポスター維持管理費」名目でそれぞれ5000円、1万円といった報酬が支払われていること。中には「ポスター監視」などと記された領収書もあった。ところが、文春の取材に複数の住民が「維持管理」した事実を否定。実際はしていない労務への報酬を有権者に支払えば事実上の買収行為に当たり、公選法違反の恐れがある。
さらに、報酬を受け取った住民の中には、投票の呼びかけや遊説ルートの検討といった「選挙活動」を行った人もいるという。選挙運動は無報酬で行うのが原則で、支払いが認められているのは、ウグイス嬢や手話通訳者など単純労務の従事者に対してだけ。選挙運動に関わった人物に報酬を支払えば、公選法が禁じる「運動員買収」に当たりかねないのだ。
林氏はこれらの支出について「ポスター貼付や毀損した場合の貼り替えなど機械的な労務」と言い、公選法上の問題はないとしていた。ところが、14日の朝日新聞の報道でさらなる疑惑が噴出。「ポスター維持管理費」として1万円を受領した地元有権者6人が「労務はしておらず、報酬も受け取っていない」との趣旨の証言をしたという。要するに、林陣営は6人への領収書を勝手に発行し、実態のない「労務費」を選挙費用として計上した疑いがあるわけだ。
野党からの追及は必至
林氏は15日、朝日の記事について報道陣に「報じられている方々の発言内容とわれわれの認識が異なっているように思う」と発言し、やはり問題ナシと主張。暗に証言した6人にケチをつけた形だ。
「林さんは政治資金や選挙を所管する総務大臣。詳細な説明を避けるのは印象が悪い。野党の追及の的になるのは必至でしょう」(官邸事情通)
「ポスター維持管理費」という謎の名目を巡っては、日刊ゲンダイも過去に似たような疑惑を指摘している。岸田政権の2022年、地方創生相だった岡田直樹参院議員(石川県選挙区)が、地元有権者に「広報掲示板維持管理料」名目で政治資金を支出。広報掲示板とはポスターを貼る掲示板のことだが、その管理料名目の支出が3年で計202万円に上ったのだ。
国会で追及された岡田氏はやはり「正当な維持管理料」と主張していたが、複数の地元有権者が「掲示板の維持管理なんかしてない」と日刊ゲンダイに証言。こうした手口は自民党あるあるなのか。閣僚経験者が言う。
「実際に維持管理をしてもらっていれば、法的に問題ありません。林さんはその点を淡々と説明すればいい。まあ、自分だったらこんなカネは出しませんけどね。疑われる恐れがありますから」
果たして林氏は説明しきれるだろうか。
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