安倍晋三元首相を銃撃して殺害した罪などに問われている山上徹也被告(45)の裁判員裁判で、奈良地裁では20日、被告人質問が行われました。
山上被告は、弁護士から「自分が45歳まで生きていると思っていましたか?」と問われると、しばらく黙った後「生きているべきではなかった」と答えました。続いて「なんでですか?」と問われると、「このような結果になってしまい大変ご迷惑をおかけしてますので」と答えました。
山上被告は落ち着いた様子で、質問に対して毎回少し考える間をとり答えました。
山上被告は、「証人として母が来たことには?」と問われると、「非常につらい立場に立たせてしまったと思う。母の信仰を理由とした事件を起こしたので責任を感じるところがあるのでは。統一教会での理解しがたい面が多々あるが、あれほどの多額の献金がなければよかった」と話しました。
続いて、証言台に立った妹については、「自分の覚えていない細かい部分、(母親の)入信当時のこともよく覚えていると思った」と話し、法廷で証言したことには「非常につらい思いをさせた」と話しました。
弁護側は、山上被告に対し、子どものころから時系列に沿って質問を続けました。
山上被告が母親の旧統一教会への入信を知ったのは中学生のころで、その時の心境を問われると「それまでの自分とは何か人生観、考え方も根本的にどこかで変わってしまったような気持ち」と答えたほか、教団のイベントについても「(母親から)非常にしつこく勧められましたので断れ切れないということはありました」と明かしました。
また、韓国に渡航を繰り返す母親と反対する祖父が言いあうなど家庭が荒れだしたことについては、「家庭内の金銭的なところは中学生にはわかることではない。どうしたらいいのか分からないという感覚だった」と振り返りました。
「卒業アルバムの将来の夢の欄になんと書きましたか?」と問われると「石ころ、と覚えています。将来はろくなことがないだろうと」と悲観していたということです。さらに、母親の献金で家庭が困窮し「実際に食べるものがない状況になってしまって、家族として助けるしかないので、旧統一教会に(自分が)間接的に利用されていると思っていた」と語りました。
山上徹也被告は2022年7月、奈良市で応援演説中だった安倍晋三元首相を手製のパイプ銃で撃ち、殺害した罪などに問われています。
先月の初公判で山上被告は、「全て事実です。私がしたことに間違いありません。法律上どうなるかは弁護士に任せます」と話し、裁判では母親の旧統一教会への多額の献金が与えた影響が大きな争点となっています。
これまでの裁判で、山上被告の母親は旧統一教会に少なくとも1億円の献金をしていたことが明らかになっています。
山上被告の母親は証人尋問で、「献金をたくさんして、教会に尽くしたら家庭が良くなると思っていたが間違っていた」と語り、「徹也は悪い人間じゃない。本当は優しい子です。私がしっかりしていたら、こうはならなかった」と訴えました。
山上被告の妹も法廷で献金で家庭が困窮する様子を語ったほか、大学卒業後に「母親から連絡があるのは金の無心の時だけだった」と振り返り、「(私には)関心がないくせに(頼ってきて)、この人は私の母ではない」と思ったと打ち明けました。
妹はさらに、「私たちは旧統一教会に家庭を破壊された」と述べました。
被告人質問は来週以降あと4回行われる予定です。