高市首相は、21日に閣議決定した21・3兆円の総合経済対策を巡り、持論とする「責任ある積極財政」の具体化に強いこだわりを見せた。首相が主導して財務省案から約4兆円を積み増すとともに、財政悪化を懸念するマーケットへの対応にも腐心した。
日曜日だった16日。首相は片山財務相、木原官房長官、城内成長戦略相らを首相公邸に集めた。
「もう一段、何かできることがあるんじゃないの」
首相は2日前に知った17兆円規模の財務省案について片山氏をただした。同省が各省要求を厳しく査定していることも耳に入っていた。首相には「財務省は面従腹背」(周辺)と見えており、財務官僚は同席させなかった。
2時間の協議で、首相は「物価高対策は十分なのか」とも口にした。来年1~3月の電気・ガス代の補助増額を求め、子育て世帯への給付金について「やったらどうか」と迫った。補助増額を要求していた日本維新の会や、子育て世帯への特別緊急支援を提言した公明への配慮があった。それに伴い総額を上積みできるとの考えもあった。
首相は、17日に内閣府が発表した直近の実質国内総生産(GDP)が6四半期ぶりにマイナス成長となったことも、財務省を動かす材料に使った。
同時に首相が意識せざるを得なかったのが、株式、円、債券がそろって売られた「トリプル安」だ。大型の経済対策になると報じられて以降、長期金利が急上昇し、警告する意見が寄せられていた。マーケットへのメッセージとして、当初予算と合わせた今年度の国債発行額が昨年度を下回るとの説明を用意した。
首相は21日、記者団に「今行うべきことは行き過ぎた緊縮財政により、国力を衰退させることではない」と語った。財政の持続可能性に触れ、「マーケットからの信認を確保していく」とも強調した。
立民・野田氏「もっと絞れ」…要求反映 国民は評価
立憲民主党の野田代表は21日の記者会見で、政府の総合経済対策について、「予算規模が大きければいいということではない。もっと絞れと主張していかなければいけない」と述べた。
同党は総額8・9兆円の案を示しており、野田氏は「政府に比べると半分以下だが、的を絞った即効性のある政策だ」と強調した。共産党の山添拓政策委員長も記者会見で、「円安が進み、物価高に拍車をかける」と政府の対策を批判した。
一方、国民民主党の榛葉幹事長は記者会見で、同党が訴えてきたガソリン税の暫定税率廃止が経済対策に明記されたことを歓迎した。榛葉氏は「規模感を含め、攻めている」と評価しつつ、財政の観点から「マーケットを注意深く見守る必要がある」と指摘した。
公明党の斉藤代表も、同党が掲げた子育て世帯への支援策が反映されたことを受け、「評価したい」と記者団に語った。「不要不急のものも入っている」とも述べ、国会審議で政府をただす考えを示した。