3連休最終日の昼、多くの買い物客が行き交う国道沿いの歩道で、歩行者が盗難車に次々とはねられた。24日に東京都足立区梅島2で起きた車の暴走は、通行人たちを一瞬で恐怖に陥れた。
家具・日用品の大型販売店が目の前にある現場には、前部が大破した白の乗用車がガードレールにぶつかった状態で停車していた。車の販売店が展示用に使うナンバープレートを付けており、異様な状況になっていた。歩道には血痕のようなものが残されており、倒れた自転車もあった。
群馬県内の実家に帰省するため1人で車を運転していた都内在住の40代女性は、交差点で信号待ち中に後方のサイレンの音に気付いた。直後に大きな音がして、目の前で数人が立て続けにはねられ、男性の警備員が空中で1回転するのを見たという。
動揺しながらも「とにかく助けなきゃ」と車を止めて、周囲の目撃者と一緒に救急車を呼んでもらったり、「AED(自動体外式除細動器)を持ってきてください」と叫んだりして、応急処置に協力したという。
女性は「心肺停止の人やけがをしている人も複数いた。目の前で起き、動揺で気分が優れない」と目に涙を浮かべていた。
妻と小学生の子ども2人を乗せた車を運転していたという男性によると、後方からサイレンを鳴らして近づいて来るパトカーがサイドミラーに映った途端、助手席にいた妻が「やばい、よけて!」と叫んだという。
その瞬間、「ガシャン」という音とともに、後ろを走行中だった車やトラックが相次いで衝突。弾みでトラックが男性の車のすぐ横まで飛んできたが、ギリギリで止まり、間一髪で助かったという。
衝突した車の運転手とみられる人物が男性の車のすぐ横を走り抜ける様子も目撃したという。男性は「連休を利用して実家に帰省するところだった。まさかこんな大事故に遭遇するなんてびっくりした」と話した。
近隣住民にとっても衝撃だった。近くの駐輪場前で事故を目撃した70代男性は「事故を起こした車の運転手かははっきりしないが、ガードレールの隙間(すきま)から歩道の方へ抜け、区役所方面に走って行く男性を見た」と語り、「こんな大きな事故が起こるのは初めてで、ショックが大きい」と動揺した様子だった。
近くに住む70代男性は、食事中に「ドーン」という大きな音を聞いた。外に出てみると白い車が酒の配送トラックに衝突していた。道路のセンターラインの方を見ると倒れている男性と、駆け寄って助けを求める女性が見えた。他にも路上で倒れている人がおり「すごく怖かった」と振り返る。
その後、ニュースで盗難車にはねられたと知った。「とんでもないことでびっくりした」と驚いている様子だった。【西本紗保美、大場弘行、松本ゆう雅】