「1票の格差」が最大3・13倍だった7月の参院選は投票価値の平等を定めた憲法に反するとして、弁護士グループが選挙無効を求めた訴訟で、広島高裁は25日、「違憲状態」とする判決を言い渡し、全16件の高裁・高裁支部判決が出そろった。「違憲状態」が11件で「合憲」の5件を上回り、格差是正に向けた国会の消極的な姿勢を厳しく評価する判決が目立った。
最高裁は来年にも統一判断を示す見通し。2016年選挙(最大格差3・08倍)、19年選挙(同3・00倍)、22年選挙(同3・03倍)と3回連続で合憲としているが、高裁で違憲状態が大きく上回ったことで難しい判断を迫られそうだ。
参院選を巡っては、10年選挙(同5・00倍)、13年選挙(同4・77倍)の2回について、最高裁がいずれも「違憲状態」と判断。選挙区を都道府県単位としている仕組みの見直しを求めた。これを受けて国会は15年に「鳥取・島根」と「徳島・高知」をそれぞれ一つの選挙区とする合区の導入を決定した。
過去3回の選挙に対する高裁・高裁支部判決の内訳は、16年が違憲状態10・合憲6▽19年が違憲状態2・合憲14▽22年が違憲1・違憲状態8・合憲7――だった。最高裁はいずれも合区の導入を肯定的に評価したが、22年選挙に対する判決では「格差のさらなる是正は喫緊の課題」とし、現行制度の抜本的な見直しも含めて国会に立法措置を取るよう求めた。
国会はその後、制度改革の議論を進めたものの、具体的な結論が出ないまま今回の選挙が実施され、格差は0・10ポイント拡大した。
高裁・高裁支部判決で違憲状態とした中には「検討が進展しているといえず、実質的には問題の先送り」(広島)▽「格差是正に対する熱意の低下が明らか」(福岡)――と具体的な制度見直しの見通しを立てられない国会の対応を問題視する意見が目立った。ただし、国会の裁量権の限界を超えるとはいえないなどとして、いずれも選挙無効の請求は棄却した。
これに対し、合憲判決は、投票率の低下や無効投票率の増加といった合区の弊害に言及。慎重に検討すべき課題や国民の理解を得る必要があり、制度設計に一定の時間がかかるのは「やむを得ない面がある」と理解を示した。ただ、東京高裁は是正を先延ばしすれば「違憲の判断も免れない」とし、制度見直しに向けたデッドラインは次回の28年選挙までになると警告した。【三上健太郎、安徳祐】