いじめ重大事態、同じ小学校で1年に2件 進級後も同じクラスに

いじめ問題に横たわる、被害者と学校側のすれ違い。被害者が求める調査は、いつ始まるのか――。
いじめにより重大な被害が生じたり、不登校を余儀なくされたりした疑いがある「重大事態」が、京都市の同じ市立小学校で2025年に2件認定された。
京都市教育委員会は1件目について、弁護士らを交えた第三者委員会による初の調査にも乗り出しているが、被害児童の保護者は「何度もうそをつかれてきた」と不信感を隠さない。第三者委のメンバー選考を巡っても保護者側の要望は届かず、2件目についての第三者委の今後は未定だ。
車道に押される、頸椎捻挫などの暴力
1件目は21年から24年にかけて起きた。男児が、複数の同級生から車道に押される、殴るなどの暴力を受けた。
4年生の頃には、同級生から羽交い締めにされ、耳付近を殴られた。外傷性の感音難聴と医師に診断され、適応障害も発症した。現在も後遺症に苦しむ。
2件目は24年から今年にかけ、1件目の被害男児と同級生の男児が、別の同級生から突然殴られるなどの被害を受け、頸椎(けいつい)捻挫や適応障害などに苦しんだ。保護者は加害者と別のクラスにするよう強く要望したが、進級しても同じクラスのままだった。
1件目の保護者は、学校側との約束が守られず、男児に我慢を強いる態度などもあったとして、学校の対応に疑問を抱き続ける。
2件目の保護者は、要望通りにクラス替えがなされなかったことについて、学校から「教員を増やして改善したため」と説明を受けたが納得できていないという。1件目の後に保護者説明会が開かれなかったことも問題視し「その時点できちんと学校が対応していれば防げた」と憤る。「同級生から暴力を受け、学校にはうそをつかれる『二重の苦しみ』だ」と訴える。
いずれの男児も転校を余儀なくされた。保護者側は、いじめ防止対策推進法に規定される重大事態にあたると申し立てし、1件目は3月、2件目は8月に認められた。
市教委は1件目について、第三者委による調査を決定。市教委ではこれまで重大事態となっても第三者委による調査はしておらず、今回は事実認定の難しさや保護者からの要望も受け、初めて実施を決めた。文部科学省が定めるガイドラインに基づき、弁護士会など職能団体からの推薦者で構成する常設の「市いじめ問題調査委員会」の委員5人による調査を行うこととした。
第三者委委員に校長の知人
しかし委員の中に、校長とともに本を出した人物の知人や、市の業務を受けるスクールカウンセラーが含まれていることが判明。保護者は「校長や市教委らに有利な判断を行う恐れがある」として、公平性や中立性が損なわれないかと懸念する。
保護者は被害者側からの推薦者も委員に含めるよう求めたものの、文科省ガイドラインでは被害者側から特定個人の推薦はできないと規定しているため、市教委は委員入れ替えはしない方針を説明した。
委員選考を巡っては市議会でも質問が出たが、市教委は「直接の関係がなく、第三者性を損なうものではない。ガイドラインに沿っているため問題はないと認識している」と答弁した。市教委は、職能団体からの推薦者1人を新たに追加することを提案しているが、保護者の了承は得られていない。
それぞれの保護者は第三者委の透明性や中立性を求め9月と11月、市議会に陳情書を提出した。保護者側は「(市教委は)『被害者に寄り添う』とは説明するが、口ばかり。こちらの要望はこれまで何一つ受け入れられていない」といい、第三者委メンバーの選考を巡っても平行線をたどっている。【日高沙妃】