日本国内の屋内・敷地内を映した3000ものライブ映像が外部から「のぞき見」可能な状態になっていることが、読売新聞などの調査で新たに判明した。大半はカメラ側の認証設定の不備が原因とみられ、メーカー側は利用者に設定の確認を呼びかけている。(社会部ネット取材班)
「ネットワークカメラを見つけるのに、あるサイトを使っている」。日本国内のライブ映像を中心に公開している欧州系サイトの運営者は今月上旬、メールでの取材に応じ、映像の収集方法を明らかにした。
そのサイトは、海外のIT事業者が運営する検索サービス。世界中のIoT機器の情報を定期的に自動収集(クローリング)し、データベース化している。独立行政法人「情報処理推進機構」によると、IoT機器がサイバー攻撃を受けるリスクなどを調べる際に広く使われているが、欧州系サイトの運営者のように「問題のある使い方もできてしまう」という。
取材班は今回、無防備なカメラの実態を調査し、こうしたカメラを少しでも減らすため、このサービスを使い日本国内で公開状態のカメラ映像を調べた。情報セキュリティー会社「トレンドマイクロ」と共同で分析した結果、約4100件の映像がヒットし、うち7割超の約3000件が屋内・敷地内の映像だった。
屋内は約750件あり、子ども関連施設の一室、高齢者施設の広間、医療機関の治療室、住宅の居間や寝室など、本来は非公開とみられる映像が多数確認された。カメラのIPアドレス(インターネット上の住所)から割り出された大まかな設置地域や映像の背景情報などから、設置された建物が特定可能なものも少なくない。約50件あるマンションのエントランスの映像には、北海道内のマンション名も表示されていた。
トレンドマイクロの成田直翔シニアスペシャリストは、これらの映像が公開状態となっている要因について「多くはパスワードなどの認証設定が行われていない可能性が高い」とみる。
公開状態のカメラには、国内大手のパナソニック、キヤノンがそれぞれ約10年前まで生産・販売していた事業者向け機種が多く含まれていることも判明した。
パナソニックのネットワークカメラ事業を2019年に引き継いだ「i―PRO」(東京)によると、当時のカメラは初期設定の段階で、パスワード入力による認証手続きが「オフ」になっていた。同社の担当者は「IT機器に不慣れな人でもすぐに使えるよう、認証の初期設定を『オフ』にしていた」と説明する。
キヤノンの場合は、初期設定でカメラの閲覧権限を一般にも与える仕様になっていた。「観光地のライブカメラや河川カメラなど、公開して使うのが多かったため」(同社担当者)としている。
映像を無断公開する海外サイトが確認されたことや、カメラへの不正アクセスが相次いだことを受け、パナソニックは16年、キヤノンは18年、初期設定時に認証を「オン」にする仕様にそれぞれ変更した。変更前の機器の利用者には、ホームページで注意喚起を行ってきたという。
今回、読売新聞などの調査で公開状態のカメラが依然多いことが判明したのを受け、i―PROは「利用者に届いていない部分もある」として、改めてホームページで▽ログインするためのユーザー認証設定は「オン」で利用▽製品のファームウェアは定期的にアップデート――などの対応を呼びかけている。