首相就任1か月、目立つ高市流「スピード」「独自性」…発言の率直さで危うさも

高市首相の就任から1か月余りが過ぎた。外交や経済政策などではスピード感や独自性を重視し、自らの言葉で明快にメッセージを伝える手法が目立つ。発言の率直さが裏目に出ることもあり、政府・与党内では「高市流」の危うさも今後の課題に挙がっている。(政治部 前田毅郎)
「60を超える国と国際機関が集う中で、多くの首脳と直接お会いできた。大変有意義な訪問となった」
首相は南アフリカで開かれた主要20か国・地域首脳会議(G20サミット)の全日程を終えた23日、宿泊先のホテルで記者団にそう強調した。
G20をはじめ、首相は就任直後に相次いだ国際会議も利用して各国首脳と次々面会するなど、関係構築に奔走した。政府関係者によると「参加した全首脳と握手することなどを事前に決めて、会議の場で実行に移している」という。
安倍晋三・元首相の路線継承を掲げ、特に来日したトランプ米大統領とは個人的な信頼関係を構築して、日米同盟の結束の強さを内外に示した。安全保障3文書の前倒し改定の方針を表明するなど、外交・安保面では安倍氏を意識した「官邸主導」の進め方が見受けられる。
首相は「責任ある積極財政」を掲げており、就任1か月の21日に閣議決定した総額21・3兆円の総合経済対策にも首相の意向がトップダウンで反映された。18歳以下の子どもに対する1人あたり2万円の支給など、当初案になかった政策を盛り込むよう直接の指示もあり、前年度の対策規模を大きく上回ることとなった。
閣僚の一人は「政策のキャッチフレーズなどがうまく発信できていて、国民の受け止めもいい」と語る。
ただ、台湾有事と「存立危機事態」に関する国会答弁は、歴代首相より具体論に踏み込みすぎたため、中国の反発を招いて関係が冷え込むきっかけとなった。与党からは「本音と建前を使い分けないと外交の舞台では立ち回れない」(自民党幹部)との苦言も出ている。経済政策では、金融市場を見据えた財政規律の維持が課題だ。
首相を支える自民党と日本維新の会の連立政権も、今後の動向は波乱含みとなっている。維新が強く求める衆院議員の定数削減については自民内でも慎重論が根強く、維新内には「自民が政策のスピード感についてきていない」(幹部)との不満がくすぶる。
衆参両院で少数与党となっている中、野党から理解を得ることも不可欠で、首相のリーダーシップが求められる場面もありそうだ。