和洋女子大の大学院構想中止訴訟が和解 原告側に謝意と遺憾の意表明へ

和洋女子大(千葉県市川市)を運営する学校法人和洋学園の新大学院設置構想のため、職を辞すなどして集まった研究者ら6人が、突然の計画中止で雇用打ち切りを通告されたのは違法として教授や講師としての地位確認などを求めた訴訟は、東京高裁で和解が成立したことが判明した。雇用打ち切りは撤回されなかったが、学園側から研究者らに対し、構想実現に向けた尽力に謝意を示し、計画中止の説明が不十分だったとして遺憾の意を表明する内容。
1審の東京地裁判決などによると、新大学院構想は同学園の長坂健二郎理事長(当時)が2019年、宮坂勝之・聖路加国際大名誉教授を設置準備に誘ったのが発端。宮坂氏は20年4月に労働契約を結んでプロジェクトが始まり、宮坂氏が声をかけた医師や看護師、医療経済の専門家らが参加した。学園は21年3月、文部科学省に設置認可を申請。同5月、文科省から「警告」付きの審査結果が示された直後に認可申請を取り下げ、プロジェクトを終了させた。
原告側は「一方的な終了による雇い止めは無効」と提訴。1審では、短期間の労働契約の成立や、学園側にプロジェクトを打ち切る裁量があることを認め、原告の請求を棄却。原告側は控訴していた。
和解は6月13日付。和解条項では、文科省への申請取り下げについて、研究者らに対する学園側の説明が「必ずしも十分ではなかった」と指摘。こうした裁判所の認識を真摯(しんし)に受け止めるよう学園側に求めた。
原告団の宮坂氏は「前職を辞して集まるなどした研究者や教員の納得を得ず、大学側が一方的に構想を取り下げる事態は他の大学でもあるのではないか。今回の和解がそうした事態に歯止めをかける一助になれば」と話した。【宇多川はるか】