【解説】東京高裁 同性婚認めないのは「合憲」なぜ? ほかの高裁5件は「違憲」

同性同士の結婚が認められないのは憲法違反だとして、同性カップルらが国を訴えている裁判。東京高裁は28日、「合憲」との判断を示し、訴えを退けました。ほかの5つの高裁では「憲法違反」との判断が示されている中で、なぜなのでしょうか。
28日、待ち望んだ判決が出ることを信じ、笑顔で裁判所に向かった同性同士のカップルたち。同性婚を認めていないのは憲法に違反するとして、国を相手に裁判を起こしているのです。
原告 福田理恵さん(51)
「先行する高裁では違憲判決が続いていますが、国会は動いていません。きょうは一歩踏み込んで、国を動かすような判決を期待しています」
原告の福田理恵さん(51)とパートナーの藤井美由紀さん(50)。2人は約11年間、パートナーとして、共に人生を歩んできました。
原告 藤井美由紀さん(50)
「早く幸せになりたい。幸せだけど」
「結婚できたらもっと幸せになるもんね」
日本では「同性婚」が認められていないため、法律上は「他人」の2人。結婚を認められて、「お互いを守れる関係性になりたい」という思いで、今回の裁判に加わったといいます。
原告 福田理恵さん(51)
「恋人同士の関係性だと何の保障もないけど、結婚することでお互いを守ることができる関係性に。早く同性同士の結婚を認めてほしいですし、その先にあるのは幸せな人たちが増える社会」
そして迎えた、28日の判決。
東京高裁は「現時点では、まずは国会内で審議が尽くされるべき」などとして、同性婚を認めていない民法などの規定は憲法に違反しない=「合憲」との判断。訴えを退けました。
判決のあと、裁判所の前に並んだ「不当判決」の文字。“国を動かすような判決”を期待していた2人は…。
原告 藤井美由紀さん(50)
「私たちは国民として享受する幸せをもらえないんだなと思って、本当に悲しい判決だと思いました」
原告 福田理恵さん(51)
「本当に怒りでいっぱいです。諦めずにこれからもちゃんと声を上げ続けて、社会が変わることを、歩みを続けたいと思っています」
日本テレビ社会部・裁判担当の宇野佑一記者が解説します。

──同性婚をめぐっては全国で起こされた6件の裁判のうち、28日に高裁では初めて「合憲」と判断されました。なぜ、東京高裁で合憲とされたのでしょうか?
東京高裁はまず、「憲法は具体的な制度の構築は第一次的には国会の合理的な裁量に委ねている」としました。
そのうえで、「国会で審議が開始されない、このままの状況が続けば、憲法違反の問題を生じることが避けられないが、現時点ではまず国会内で審議が尽くされるべき」としました。
──同性婚を認めないのは「憲法違反」だとした、5件の高裁判決と28日の判決、判断の違いはどこにあったのでしょうか?
1つ指摘できるのは同性カップルが受ける不利益についての評価です。
「憲法違反」と判断した高裁は、異性間の夫婦のように、税金の配偶者控除や相続権が認められていないことなど、同性カップルが受ける不利益は重大だと指摘していました。
しかし、28日の判決では「法的効果の一部は、契約で代替する方法がある」「自治体がパートナーシップ制度を導入し、多くの民間企業も同様に支援する取り組みが広がっている」などとして、同性カップルを区別することが「合理的根拠に基づかないとまでは断じることが困難」としました。
──裁判は今後どうなるのか、見通しはあるのでしょうか?
これまでの5件の裁判では、「違憲」と判断されたものの、国の賠償は認められなかったため、上告しています。
28日の裁判も「合憲」との判断ですので、原告側は上告する方針です。
今後は、一連の6件の裁判について、最高裁がまとめて審理し、合憲か、違憲か統一判断を示すことになるとみられます。