安倍晋三元首相を銃撃して殺害した罪などに問われている山上徹也被告(45)の裁判員裁判で、奈良地裁では2日、3回目の被告人質問が行われ、山上被告が事件前日に旧統一教会の関連施設を銃撃したことについて、「自分が怒りを感じていることを示すために撃ちました」と語りました。
検察官から「その頃には安倍元総理を襲撃することを決めていた」と問われると、山上被告は「そうです」と語り、「怒りの対象は統一教会か」との質問に「はい」と答え、「(安倍氏と教団の)関係性が深いのは常識だが、一般社会では分かっていないので、予め示しておかないといけないと思った」と話しました。
さらに、山上被告は事件当日について、「銃撃するなら後方からと思っていた。警備員が私が考えている方向に移動し、偶然とは思えない。自転車などに警備の目はそれていたので、今だと思って車道に出た。(安倍氏の)上半身を狙った。射撃の本で撃つときの心得は『無心で撃つこと』とあり、なるべく何も考えずに撃ちました」と話しました。
山上徹也被告は2022年7月、奈良市で応援演説中だった安倍晋三元首相を手製のパイプ銃で撃ち、殺害した罪などに問われています。10月28日の初公判で山上被告は、「全て事実です」と話し、母親の旧統一教会への多額の献金が与えた影響が大きな争点となっています。
弁護側は、旧統一教会に対する母親の献金をきっかけに、兄が自死に至り、自身も進学をあきらめるなど、家庭崩壊ともいえる状況に陥っていたことを強調。家庭環境と事件にはつながりがあるとして、量刑を決める上で「十分に考慮されるべき」と主張しています。
一方、検察側は「不遇な生い立ちを抱えながら犯罪に及ばず生きている者も多くいる」と強調したうえで、「不遇な生い立ちが刑罰を軽くするものではなく被害者(安倍元首相)は何ら関係ない」と指摘しています。
11月20日に行われた1日目の被告人質問の冒頭、弁護側から「自分が45歳まで生きていると思っていましたか?」と問われると、山上被告は「生きているべきではなかった。このような結果になってしまい大変ご迷惑をおかけしてますので」と答え、母親の献金により家庭が崩壊したことについて、「実際に食べるものがない状況になってしまっていた」と語りました。
被告人質問の2日目(11月25日)には、安倍氏が教団の関連団体に送ったビデオメッセージについて(旧統一教会が)どんどん社会的に認められている。何も害のない団体と認知され、 被害を被った側からすると、非常に悔しい。絶望と危機感、困るという感情」と言い表しました。
一方で、山上被告は2005年ごろから教団の幹部の襲撃を企ていたことを明かしています。
2018年に韓鶴子総裁の娘が来日した際、「ナイフと催涙スプレーを持って待っていたが、ボディーガードと歩くのをみて躊躇して何もできずに見送った」と説明。
2019年に韓鶴子総裁が来日した際も、「名古屋だったので前日から近くに泊まって会場を下見した。火炎瓶を何本か持って行ったが、(失敗して)海に捨てた」と話しました。
そして、2020年末ごろから銃を製造し始めた心境については「(2018年の時は)娘を相手にナイフ・催涙スプレーで実行できなかった。最初は火炎瓶だったが、一番いいのは銃だと思った」と語っていました。