《安倍元首相銃撃事件》山上徹也は“誰に対して”謝罪しているのか? メディア報道で強調されがちな「反省」の真意を検証する

安倍晋三元首相銃撃事件で殺人などの罪に問われている山上徹也被告(45)の裁判が佳境を迎え、12月2日からは3日連続で被告人質問が行われた。
母親から1億円超の献金を受け取り、家族の人生を翻弄した統一教会への恨みが動機とされるこの事件。審理後半は、銃撃対象が教会幹部から安倍氏へと切り替わったことに関し、動機解明に時間が費やされた。
「昭恵さんをはじめとして安倍元首相のご家族には何の恨みもありませんので、殺害したことで非常にこの3年半辛い思いをしてきたのは間違いないと思います。そのことに関しては自分に弁解の余地はない。非常に申し訳ないことをしたと思っています」
4日、被告人質問の最終日に初めて遺族への謝罪を口にした山上。昭恵氏へ謝罪の手紙の送付を検討していたことや、裁判終了後に遺族への弁償を行うつもりであることも語った。
誰に対して「謝罪」しているのか
各社報道で強調される「謝罪」や「反省」だが、内容を丹念に精査すると、その対象は実に曖昧だ。例えば、裁判官から罪への向き合い方を問われると……。
「安倍元総理大臣は非常に影響力のある方なので、そういった方を殺害してしまったことは、とても大きな意味があったことだと思っています。
それが模倣犯を生んでいることにも繋がっているし、陰謀論も自分が行ったことに原因があると思っていますので、非常に責任は大きい」
「事件を起こしてよかったか?」の問いには…
――銃を作っている過程において葛藤はなかったか。
「特に統一教会の中心人物に対してそういった道徳感情を超えてしまった部分があり、安倍元総理に向かったことに関して、殺害されなければならなかったのは、間違いだったと思っております」
殺害までは意図していなかったというのだ。
「銃の威力は相当レベルが低いと思っていたので、命中しても命を落とす確率は高くないと思っていました。自分の人生の意味として、統一教会に打撃を与えるということの実現として引き金を引くのが、最終的に到達したことだった」
一方、安倍氏を標的とした後、「考えが切り替わることはなかったか」との質問には「安倍元総理が全く統一教会と関係がなかったわけでもありませんので、完全に切り替わるということはなかったです」とし、教団への解散命令や宗教2世支援など事件後の動きに対しては「母親にとっても世の中にとってもあるべき姿」とした。
そして、「事件を起こしてよかったか?」との問いには、「少なくとも私や被害者にとってはそういう面があった」と自負を滲ませつつ、「全体として考えると一概には言えない」と濁すのだった。
真意が掴めぬ中、18日の最終陳述が注目される。
(「週刊文春」編集部/週刊文春 2025年12月18日号)