痛恨の失敗、基幹ロケット全滅 持続的成長のため、萎縮せず検証、挑戦を

日本の宇宙開発に暗い影を落とす、痛恨の失敗だ。今回の主力大型ロケット「H3」8号機の打ち上げ失敗について、原因究明や対策完了にはかなりの時間がかかるとみられる。それまでは当然、新たなH3の打ち上げは見送られるはずだ。
先代の主力大型ロケット「H2A」が6月に引退し、日本はH3を代替できる機体はなく、当分は大型ロケットを失う。H3が目指す、民間企業の衛星打ち上げなどで急拡大中の宇宙輸送需要の獲得も遠のきそうだ。
H3は、来年度に予定されている火星衛星探査計画「MMX」の打ち上げにも使われる予定だが、探査計画に影響が出る可能性はゼロではない。
一方、日本には現在、利用できる小型ロケットもない。小型の固体燃料ロケット「イプシロンS」を開発中だが、新開発の第2段エンジンが、令和5年7月と6年11月の燃焼試験で2回連続で爆発。打ち上げの見通しが全く立っていない。
H3とイプシロンSはともに、情報収集衛星や気象衛星など、国の重要な衛星の打ち上げに使用する「基幹ロケット」で、安全保障上も重要な位置付けだ。だが今回のH3の失敗で、日本の基幹ロケットは全滅状態だ。
なぜ今回の失敗が起きたのか検証し、今後はどうするべきかを学び、萎縮せず挑戦を続けていくことが重要だ。(伊藤壽一郎)