〈大敗の中道・米山隆一氏が敗因を分析〉「SNSで雰囲気が…」拡散したデマに無策だった執行部「今後は真ん中~左寄りに戻らないと」

衆議院選挙で大敗し引責辞任した中道改革連合の野田佳彦前代表は「自民党にガチンコ勝負で負けたという実感はない」「独特の『時代の空気』に飲み込まれた」と主張する。これに対し、落選した立民出身の米山隆一前衆議院議員が自身のXで正面から反論した。「現代の選挙戦では『空気』が重要で、対応策が必要であることを再三再四提言したのにスルーしたのは野田さんです。今般の決断・実行も『空気』を余りに軽視していたと思います」と指摘する米山氏は、中道の敗北は「必然だった」とまで言う。その理由を詳しく語ってもらった。
〈画像)中道の大幹部安住氏に勝った森下千里氏のグラビアアイドル時代のミニスカート警察官などの秘蔵写真
「自己否定してしまったのでコアなファンも一定離れたでしょう」
――立憲民主党が公明党と一つになって選挙に突入したことをどうみますか。
米山隆一(以下同) 2党が合併すれば支持率の劣勢を挽回できると執行部は本気で思っていたと思います。しかしその「足し算」だけ考え、批判されることがまったく見逃された。これでふわっとした立憲の支持層は離れたのかもしれないと思います。
さらに立憲は“真ん中から左寄りまで”という立ち位置に存在意義がありました。それを執行部が「左がいるから俺たちダメなんだ。真ん中にさえ行けば支持は増える」という態度を打ち出し、自己否定してしまったたのでコアなファンも一定離れたのではないかと思います。
私も自分は真ん中だと思うし、真ん中の人が多いのはいいのですが、「真ん中プラス何か」でなければ方向性がない。「真ん中プラス右」の立ち位置に自民党や国民民主党がいる中で「俺たちド真ん中です」って言っても難しいでしょう。
――「時代の空気に飲み込まれた」という野田前代表の認識をどうみますか。
今回、街宣車に手を振ってくれる人は結構いて、体感は悪くないのになぜこんなに情勢が悪いのか、という印象を仲間も私も持ちました。
このように手を振ってくれる層は政治に関心がある人です。こうした人たちが街頭での政治家の呼びかけを聞いて一定の「空気」をつくり、それが政治に関心がない層に伝播していくというのがこれまでの選挙でした。
ところが今回はSNSの動画で、まず関心のない層で雰囲気が作られ、そこから関心を持つ層に伝播する順序になっていた。野田さんは目に見える人にコンタクトしてそこから伝播させていくということをやってきた政治家だから、あのような認識を持つこともわからないではありません。
しかし、僕も今回は対応が遅れたと思いますが、政治家はそういう世の空気がどうできているかを一生懸命見ながら(空気を)作っていくのが仕事なわけですよ。
――「空気への対応が必要だと再三提言したのに野田さんがスルーした」とXにポストされたのは、選挙中に対応を求めたのに方針転換ができなかったということですか?
いえ、そんな短い期間の話ではありません。昨年の参議院選挙で負け、SNS対策を強化しなければいけないとなって広報委員の職務として真剣に提言しました。党では特命チームまで作りました。しかし新たな提言は殆ど受け入れられなかったのです。
「再生回数がカネになる問題」に対し自民党だけは動きが鈍かった
――新たな提言とはなんですか。
SNS対策は突飛なことはありません。まずキーコンセプトを作る。今回、高市早苗首相が言った「積極財政で日本を強くする」みたいなものです。私は自民党のこのコンセプトは荒唐無稽だと思いますが、とにかくまずそれをつくる。
そしてそこを起点にSNSの広報を展開していくわけです。そこに一貫したストーリーがないと話が広く伝播しません。
同時にネガティブな発信に迅速に対応できる態勢を整えることも求めました。これも特別なことではなく、例えば切り抜き動画の明らかなデマには法的措置を取る。そうでなくても著作権法違反のものは、著作権を主張してそのコンテンツの削除を求めれば一定の対応は可能になります。その通報システムを確立しておこうということです。
ユーチューバーは何回も削除の申し立てを食らうとアカウントが凍結/収益停止され稼げなくなります。損害賠償訴訟を起こさずとも著作権法違反を主張するだけでも効果があります。
そうした援護態勢をちゃんと確認しよう言ったのに、「余計なことすんな」みたいな感じで全部潰れました。その結果、今回選挙では「岡田克也さんが中国のスパイだ」と言い立てる事実無根の動画への対応も遅れ、炎上することになったんです。
――2024年の兵庫県知事選挙などから指摘されてきたのに旧立民の執行部が問題意識を持っていた印象はないですね。
騎馬兵の隊長が指揮を取っていて、「制空権が大事」だといくら言っても聞いてくれない。「騎馬戦力を倍にしたから勝てるんだ」みたいなことを言われる感じです。制空権を奪われた状態で何したって中々如何ともしがたいですよっていう話が通じない。
「SNS動画の再生回数がカネになる問題」は超党派で対応を考えようとしましたが、自民党だけは非常に動きが鈍かったです。自分たちに有利になるとある程度わかっていたのだと思います。リベラルを叩けば何万とビューが集まってくる傾向がSNSではあります。
SNSの収益化によって無関心層が政治をみるようになった。政治がこんなに回るコンテンツになって、政治で気に入らないやつをぶっ叩けば儲かり、それが無関心だった人から空気を決めていくことにつながっている。
だから動画の洪水の中で無関心層をどう取り込むかという状況で、相変わらず街頭に立って関心層に訴え続ければなんとかなると(執行部は)思っているんじゃないでしょうか。
「このまま行ったら衰退ですよね」
――中道執行部は交代しましたが、そうした認識を持つように変わるでしょうか。
変わりづらいでしょうね。僕も(選挙に)落ちていて偉そうに言える立ではありませんが、(旧立民の当選者は)どんなに制空権を失っても勝てるという地上戦で強い人が生き残ったわけで、そうなると「結局頼りになるのは地上戦」みたいな話になりかねない。
野田さんが相変わらず「ガチンコで負けたつもりはない」みたいなことを言っているし。このまま行ったら衰退ですよね。
もちろん(自民党と)大きな資本力の差がある中で空中戦を展開するのは難しいんですけど、当面は「ド真ん中で全部取る」とか言わずに、一定程度コアなファンを固める空中戦をした方がいい。そういう意味では「真ん中・左寄り」という本来の立ち位置に戻らないと相当厳しいと思います。
で、実は「真ん中・左寄り」はすごく空いてる(他党が入ってきていない)ところだからそこに特化したらいいと思います。エモーショナルなことも言いやすい立場ですよね。立民の立党の精神みたいな、「寄り添おう」「一緒に豊かになろう」みたいな感じでね。
――「真ん中・左寄り」は公明党が一緒になっている状態で可能でしょうか。
率直に言ってわからないですが、訴え方次第だと思います。
(旧立民の)「真ん中・左寄り」のレフトは今までは戦争反対、安保法反対、9条守る、みたいなことを訴えていましたが、これからはむしろシングルマザーや非正規雇用とか、社会のメインストリームから外れてしまった人をちゃんと守っていきますよっていう事を訴えるべきだと思います。そういうレフトだったら公明党さんともできるかもしれない。
そこは立憲も今までのレフトの意味をちょっと変えた方がいいでしょうね。
取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班
米山隆一/よねやまりゅういち 1967年9月8日生まれ。医師で医学博士。弁護士資格も持ち第一東京弁護士会所属。自民党、日本維新の会、民進党を経て2016年の新潟県知事選挙に無所属で出馬し当選。21年の衆議院選挙で当時の新潟5区から無所属で出馬し当選、22年に立憲民主党に入党する。24年衆院選では区割り変更後の新潟4区から出馬し当選。憲法審査会理事などを務めた。今回衆院選では中道改革連合公認で出馬したが小選挙区で落選し比例復活もならなかった。