陸軍青年将校らが首相らを襲撃し、「近現代日本最大のクーデター未遂」といわれる2・26事件から90年の26日、東京都内2カ所で追悼式と慰霊法要が行われた。事件に参画した青年将校の遺族らが亡くなった人たちの冥福を祈った。
午前9時過ぎ、遺族らで構成する仏心会の今泉章利さん(76)が渋谷区の渋谷税務署の脇にある慰霊像の前で手を合わせた。今泉さんは世界各地で起きている戦争や紛争を念頭に、「力に頼って何かをする人は、力で滅びる。武力に頼らない平和な社会が来るように、と祈りました」と話した。
父の故・義道さんは事件当時少尉で、当日の午前3時に上官から突然、計画を知らされた。防ごうとしたが、かなわずに結果的に参加。事件後、禁錮4年の刑に処せられた。
周辺にはかつて陸軍刑務所があり、事件の首謀者らが銃殺された。慰霊像は1965年に仏心会が建立した。毎年2月26日に殺害された政府重臣や警護で殉職した警察官、青年将校らを悼んでいる。
午後には、刑死した将校らの「二十二士之墓」がある港区の賢崇寺で法要が開かれた。処刑された安田優少尉の妹、近藤睦枝さん(94)は「幼い私をかわいがってくれました。抱き上げて『高い高い』をしてくれたり、マツタケ狩りに連れて行ってくれたり。優しい兄でした」。事件後は郷里の熊本県・天草で「村八分状態になり、親戚からは絶縁すると言われました」などと、残された家族の苦労を振り返った。
事件は36年2月26日、「昭和維新」を目指す青年将校が約1500人の兵士を率いて斎藤実内大臣と高橋是清蔵相、渡辺錠太郎陸軍教育総監を殺害。警護の警官5人も殉職した。29日に鎮圧され、その後青年将校ら19人が死刑となった。遺族らは憲兵や特高警察の監視を受けながらも賢崇寺の協力を得て法要を営み、戦後も追悼を続けてきた。【栗原俊雄】