2024年9月、福岡市内のオフィスで開催された懇親会で同僚にあたる30代の女性社員に背後からいきなり両胸を両手でわしづかみにして不同意わいせつの罪に問われた47歳の会社員の男。
社員約40人が参加した懇親会の会場での犯行だった。
会社員の男は、被告人は以前から、懇親会の余興として女性社員の体を触るふりをして返り討ちにされたり、周囲の男性社員から懲らしめられたりして場を盛り上げていて、事件当日の懇親会においても同様のことをしていた。
会社員の男の裁判は、同僚の30代女性社員の同意があったのか、または女性社員の同意があると会社員の男が誤信していたか否かが争点となった。
会社員の男と女性社員は同僚 仕事以外での接点なし
判決によると、47歳の会社員の男は2024年9月26日午後8時半ごろ、福岡市内のオフィスで開催された社内懇親会の会場において、30代の女性社員に対し、瞬時のことで時間のゆとりがないことにより同意しない意思を形成することが困難な状態にあることに乗じ、その背後から、いきなり両胸を着衣の上から両手でわしづかみにするわいせつな行為をした。
会社員の男と被害を受けた女性社員は同じ会社に勤務している同僚であった。
しかし、仕事以外の場面で会うことはなく、個人的な連絡先もお互いに知らない関係であり、事件当日まで会社員の男が被害を受けた女性社員の体を触るようなことはなかった。
約40人が参加した会社の懇親会 会社員の男が”余興”で女性社員の体を触るふり
事件当日、勤務先の会社オフィス内で約40名の社員が参加して懇親会が開かれた。
会社員の男(47)は以前から、懇親会の余興として女性社員の体を触るふりをして返り討ちにされたり、周囲の男性社員から懲らしめを受けたりして場を盛り上げていた。
会社員の男は、事件当日の懇親会においても同様のことをしていた。
被害を受けた女性社員(30代)は懇親会の様子を他の支社と共有するため、ハンディカメラで撮影していた。
会社員の男の手が女性社員の胸を触る 事件はその約5分後に…
事件の約5分前、被害を受けた女性社員(30代)が会社員の男(47)に「来いよ」と言い、男がこれに応じて女性社員に近づき腕をつかむなどした。
女性社員が抵抗し、周囲の男性社員が男の行動を制止したが、その際に男の手が女性社員の胸を触るということがあった。
会社員の男はその後、女性社員の背後から近づき、声をかけることなく、突然、腕の下から手を差し入れて両胸を着衣の上から両手でわしづかみにした。
なお、女性社員は会社員の男が自分の胸を触ることを明示的に許諾したことはなかった。
また、会社員の男は懇親会を盛り上げるために女性社員の体を触るふりをしたり、腕や背中を触ったりしたことはあったが、女性社員の胸等の性的部位を触ることはなかった。
裁判の争点は”女性社員の同意の有無”あるいは”会社員の男の誤信の有無”
会社員の男(47)の裁判では、男が女性社員(30代)両胸を着衣の上から両手でわしづかみにしたという行為そのものに争いはなかった。
裁判の争点は、女性社員の同意があったか、あるいは女性社員の同意があると会社員の男が誤信していたか否かであった。
検察側「被害者が不同意の意思を形成することが困難な状態であった上、わいせつ行為をされることを同意していたとは言えない」
論告求刑で検察側は、会社員の男(47)が被害を受けた女性社員(30代)に声がけをすることもなく、背後から突然わいせつ行為をしていることから
「あらかじめ予期し得ない態様で行われていることからして、瞬時のことで時間にゆとりがないことにより同意しない意思を形成することが困難な状態であったことは明らかである」
と主張した。
さらに、事件の直前に行われたのは、宴席でふざけ合う中で会社員の男が女性社員の腕をつかもうとする際に女性社員に会社員の男の指が触れたというものであることを挙げたうえで
「背後から被害者にわいせつ行為をするというあからさまに性的な意味合いを有する行為とは異質なものである」
「被告人が従前の懇親会において女性社員にわいせつ行為はしていなかったことや懇親会には数十名が参加していたことなどからすれば、被害者とすれば、直前に被告人の指が触れたことがあったにせよ、更に、被告人から、わいせつ行為を受けることまで予期し得なかったことは明らかである」
と強調した。
「被告人が被害者の同意があったと錯誤に陥る状況でもなかった」検察側は懲役2年を求刑
検察側は会社員の男が(47)が女性社員(30代)の同意があると誤信していなかった理由について以下のとおり主張した。
「被害者と被告人は同じ会社で稼働している職場の同僚であり、連絡先等も知らず、プライベートで会ったことは一度もなく、お互いに恋愛感情を持ったことはなく、被告人が事件当日以前に被害者の体を触ることもなかったことからすると、許諾なく被害者の性的部位に触れられるような間柄ではない」
「会社の数十名が出席する懇親会の場であったことからすると、被告人の指が被害者に当たることがあったとしても宴席でふざけ合う中で生じたものであり、被害者が会社の懇親会の雰囲気を壊さないように、大事にはするまいと拒絶的態度を表面に出さないことは通常人であれば十分考え得る」
「被害者が、被告人に対しわかりやすく拒絶的態度をとらなかった事実は、被害者の同意があったと誤信するような事情とはなり得ない」
「被告人の指が被害者に触れたという態様と、背後から被害者にわいせつ行為をするという行為は異質なものであるから、被告人の指が被害者に触れた後に被害者が拒絶的態度を示さなかったからといって、単なるふざけ合いの際に生じうるものとは性的な意味合いが明らかに異なる、わいせつ行為まで被害者が同意していたと被告人が誤信するようなことはおよそあり得ない」
検察側は、女性社員がわいせつ行為をされることを同意していたとは言えず、会社員の男が女性社員の同意があったと錯誤に陥る状況でもなかったとして懲役2年を求刑した。
会社員の男「被害者も懇親会を盛り上げようとしていると思い、背後から触った」 弁護側は無罪主張
弁護側は、会社員の男(47)が女性社員(30代)の両胸を着衣の上から両手でわしづかみにしたこと自体は争わないものの、不同意わいせつ罪の成立を争い、女性社員の同意があった、あるいは女性社員の同意があると被告人が誤信していたと主張した。
弁護側は
「本件行為までに被害者が不同意の意思を形成・表明する時間的余裕はあった」
「少なくとも本件程度の接触について被告人は被害者の同意があると認識しており不同意であることにつき故意を欠く」
と述べ、被告人の無罪を主張した。
会社員の男は
「そんなに嫌がるような態度を見せなかったので、被害者も懇親会を盛り上げようとしていると思い、1回目と同じような延長線上で2回目に背後から触った」
と述べた。
男女約40人が集まり、オフィスで開かれた社内懇親会での不同意わいせつ事件。
注目の判決は、2月25日に言い渡された。
※この判決は前・後編で掲載しています。