高市首相が高額療養費見直しめぐり「丁寧に議論した」は大ウソ 患者団体を“アリバイ”に利用する悪辣

「制度の持続可能性の確保、長期療養者や低所得者のセーフティーネット機能強化の両立を目指す」──。政府が患者負担の上限引き上げをもくろむ高額療養費制度の見直しについて、高市首相が繰り返すテンプレである。さも「患者のため」のような言い草だが、見直しの再検討を黙殺する常套句に他ならない。
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厚労省は今年8月から2年かけ、高額療養費の所得区分を見直し、負担上限額を引き上げる方針だ。直近12カ月以内に3回上限額に達した患者の負担額を4回目以降は抑える「多数回該当」(年収370万~770万円は4万4400円)を据え置き、過度な負担増にならないよう「年間上限」を新設するなど、一定の配慮は見せている。
しかし、制度利用者のうち約8割は多数回に該当せず、負担は純増。年収650万~770万円の場合、月額の負担上限は現行の月8万100円から最終的に11万400円へと跳ね上がる。
こうしたツケ回しの最大の被害者は、がん・難病患者である。大病した場合に経済的余力がそがれ、さらなる負担増で治療断念につながることは患者団体が重ねて指摘してきた。しかし、高市首相は聞く耳を持たない。負担上限引き上げについて、昨年の総裁選では「反対」だったにもかかわらずだ。
12日の衆院予算委員会で、高市首相は反対から転じた理由を問われて「これ(今回の見直し)だったら、私が考えていた負担、不安は払拭できると考えた」と強弁。改悪を正当化するために、「患者団体の方も参加した専門委員会で議論が積み重ねられてきた」「患者団体の方も含め十分に議論していただいた」と、何度も「患者団体」を引き合いに出した。
「複数回ヒアリング」と強調も、実際は聞いただけ
確かに、全国がん患者団体連合会(全がん連)や日本難病・疾病団体協議会(JPA)など当事者が参画する「高額療養費制度の在り方に関する専門委員会」では、昨年5月から12月末にかけて計9回の議論が行われてきた。だが、12月15日の「基本的な考え方」の取りまとめに至るまで、具体的な引き上げ金額は委員に明示されないまま。同24日の片山財務相と上野厚労相の大臣折衝で突然、具体策が明かされた。
全がん連とJPAは大臣合意の当日、共同声明を発表。多数回該当の据え置きや年間上限の新設を評価する一方、〈月毎の限度額については十分に抑制されていないと言わざるを得ません〉と懸念を示した。高市首相は12日「専門委で患者団体をはじめとした関係者から複数回ヒアリングを行った」と強調したが、実際は聞いただけ。「丁寧な議論」というアリバイに患者団体を利用したのだ。
全国保険医団体連合会(保団連)の調査によれば、制度利用者の「治療に伴う年収の平均減額率」は、年収200万~770万円で約3割。厚労省は、上限引き上げに伴う受診行動の変化によって1070億円の給付費削減を見込んでいるのだからタチが悪い。
12日の予算委の審議中、保団連が厚労省内で開いた会見で、がん闘病中の水戸部ゆうこさんは次のように訴えた。
「今、健康に生活ができている方も将来、大病を患うこともあろうかと思いますが、『病気をしたら終わり』という人生にならないよう、国は安心を提供するのが務めなのではないでしょうか」
この言葉の重みを高市首相は噛みしめるべきだ。
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