3月11日、大阪府の公立高校の一般入試が行われました。平均倍率は1.05倍となりましたが、現時点で約4割の学校が『定員割れ』。背景には、「高校の授業料無償化」があると考えられています。
4月から全国で実施予定の授業料の無償化―。
全国に先駆けて無償化に取り組む大阪で、いま何が起きているのか。そして、無償化は現場の教育にどのような影響を与える可能性があるのか。
教育アドバイザー・清水章弘さんの知見を交えて解説します。
「私立専願者」の割合が年々増加…懸念される『公立離れ』
全国に先駆けて授業料の無償化を進めてきた大阪では、いわゆる「公立離れ」が進んでいると懸念されています。
大阪府内での「私立専願者」と「公立高校に進学したいと考える中学3年生」との割合の推移を見てみると――
2024年=無償化が段階的に開始されたタイミングから「私立専願者の割合」が年々増加。一方で「公立高校に進学したいと考える中学3年生の割合」は年々減少しています。
〝無償化”始まった2024年以降 府立高校の4割以上が定員割れ
その結果、大阪では、授業料無償化が始まった2024年以降、4割以上の府立高校で定員割れが起きています。今回の入試でも、大阪府内の府立高校全126校のうちに55校(43.6%)が定員を割り込みました。
大阪府では「3年連続で定員割れとなった高校は再編・整備の対象とする」というルールが設けられています。最終的な判断は地域の実情を踏まえて行われるということですが、今後は学校の統廃合が進んでいくと考えられています。
無償化で公平な競争になるはずが…「安さ」のメリット失い「公立いじめ」に?
少子化が進み、子どもの数に合わせた学校数の適正化が避けられないなか、始まっているのが公立高校と私立高校の生き残り競争です。
授業料が無償化されたことで、その競争は“公平”になるはずでした。
しかし、無償化によって公立高校は今までの「安い」というメリットを失いました。このため現場からは「公立いじめではないか」と“不公平”を指摘する声が上がっています。
入試制度や修学旅行…柔軟な私立は有利?
「私立有利」とされる要因の一つが、私立高校の柔軟な入試制度です。
教育アドバイザーの清水章弘氏は、「私立高校は試験日程が公立より早く、かつ午前・午後の複数回受験や併願が可能であるのに対し、(現時点で)公立高校の受験は基本1校のみ」だと指摘したうえで、次のように話しています。
(教育アドバイザー・清水章弘氏)
「試験日程が早いと、なるべく早く合格して安心したいと思いますよね。そうした条件を揃えずに『競争しましょう』というのは、甚だおかしなものだと思います」
このほか私立高校では、海外への修学旅行やデザイン性の高い制服、充実した設備など、学校の魅力づくりに力を注ぎやすいという側面もあります。
現場からはこうした競争条件の差によって「私立有利で公立には不利」だという指摘が上がっているといいます。
『不利な競争』で高校の魅力低下…懸念される「負のスパイラル」
もし「不利な競争」によって、現場の教員のモチベーション低下や人材流出が起これば、公立高校のさらなる魅力低下という「負のスパイラル」にもつながりかねません。
教育の質にも関わる問題になる可能性があります。
高校は「最後の公共施設」 影響は教育だけにとどまらず
さらに、統合や再編といった学校数の適正化がもたらす問題は、単に教育だけにとどまりません。
地方の過疎化が進む中、高校は「最後の中核的な公共施設」としての役割も担っているからです。清水氏は、「高校の減らし方は街づくりそのものだ」と指摘します。
(教育アドバイザー・清水章弘氏)
「高校がなくなると、子育て世帯がいなくなってしまう。元気がなくなってしまう。つまり、どこの学校を減らしていくのかということは、街づくり、国づくりそのものだから、慎重に行かなければいけない」
高校のあるべき姿とは?時代に合った学びとは
では、高校のあるべき姿とはどのようなものなのでしょうか。
時代とともに求められる人材は変化しているにもかかわらず、国内の高校では戦後から『普通科偏重』が続き、現在は約74%の生徒が普通科に在籍しています。
アメリカなどでは、高校は「社会進出を準備する場」という位置づけが強く、そのまま就職する生徒も珍しくありません。
AIが普及し、デジタル人材が求められるこれからの時代。理系教育の強化や、より高度で専門的な技術を若いうちから学ぶなど、高校教育も社会の変化に合わせたかたちに変化させていく必要があるのかもしれません。
(2026年3月11日放送 MBS『よんチャンTV 山中プレゼン』より MBS山中真解説委員と教育アドバイザー清水章弘氏の解説による)