どうなる?京都駅前の“高さ規制”
「京都駅周辺の建物の高さ規制を緩和する」
そんな内容が含まれた意見書案が3月25日に取りまとめられました。京都では景観保護のため、条例で建物の高さに厳しい規制がかかっていますが、市の有識者会議は駅前の建物の高さ規制を現在の31mから最大60mに緩和することなどを盛り込んだ意見書案をまとめました。
過去にも、建物の高さをめぐる景観論争が度々起こっている京都。なぜ今、規制緩和案が浮上したのか?その狙い、そして反対意見は?MBS京都支局キャップ・木村富友佳記者が解説します。
現在の上限は『31m』京都駅周辺の建物の高さ
現在、京都市の景観を守っている「新景観政策」(2007年)。これは市街地の建物の高さの上限を45mから「最高31m」に引き下げるもので、エリアごとに6段階の規制が設けられています(10m・12m・15m・20m・25m・31m)。
京都駅前については、現在の上限は「31m」。“工作物”とみなされている京都タワーは131m、“特定街区”の京都駅ビルは60mで例外扱いとなっています。
『最大60m』上限引き上げ案が浮上「駅前の再生につながる」
そんな中、京都駅前の高さ規制を現在の31mから「最大60m」に引き上げる案が浮上しています。
<京都駅前 建物高さ上限案>
▼京都駅ビル 60m
▼京都タワー周辺エリア 60m
▼京都駅南側エリア 45m
▼京都駅東西エリア 45m
▼京都タワー北側エリア 45m
京都駅周辺のまちづくりについて約1年にわたり議論してきた市の有識者会議は、高さ規制の緩和案を取りまとめ、「時代に合わせて柔軟に変化させていく必要がある」と結論づけました。
(京都駅前の再生に係る有識者会議 大庭哲治座長)「緩和した方がより京都の駅前の再生につながるという観点で取りまとめた」
狙いは“オフィス増加”「延床ベースで1.5倍~2倍程度の供給ポテンシャル」
規制緩和の狙いは「オフィス増加」。新幹線の停車駅で比較すると、京都駅周辺のオフィス数は極めて少ないのが現状です。
<テナントオフィスストック 賃室総面積>
(新幹線停車駅800m圏内)
▼名古屋駅 22.4万坪
▼新大阪駅 15.6万坪
▼京都駅 1.6万坪★
▼岡山駅 2.9万坪
▼広島駅 4.1万坪
▼博多駅 14.7万坪
※2023 CBRE調べ
延床面積1000坪以上かつ新耐震基準相当の賃貸オフィスビルを集計
特に駅北側は築40年以上の建物も多く、近年建築費が高騰する中、現在の高さ規制では民間事業者の呼び込みが難しいのです。
高さ規制を緩和した場合、「単純な延床ベースでは、現在の1.5倍~2倍程度の供給ポテンシャル」があると言います(京都大学・大庭哲治教授)。
京都のテナントオフィス空室率は、大阪とほぼ同じで約4%。一方、賃料は大阪より1坪あたり約1500円高いということで、オフィス需要はあるようです。
背景には「人口流出」就職で他県に…結婚・子育て期の転出も多い京都
では、なぜオフィスを増やしたいのか?その背景には京都の課題「人口流出」があります。
“学生の街”と言われる京都ですが、就職を機に他県に移る人が多く、生産年齢人口が減少傾向にあります。ここ15年で市内就業者が約2割減っているというデータもあり、結婚・子育て期の転出も多いということです。
京都タワーや京都ホテルも…景観論争再び
一方、地元からは反対の声も。例えば京都弁護士会は、規制緩和をめぐる検討プロセスへの疑問や、東寺・五重塔など世界遺産の景観悪化、今後の規制緩和の拡大リスクなどを主張しています。
<京都弁護士会による反対の声明>
▼検討のプロセスに疑問
・有識者会議の一部が非公開
・有識者の選び方に疑問
▼世界遺産の保全への懸念
・当時の国の推薦書に「高さ制限区域」
▼今後の規制緩和拡大リスク
過去にも京都では、建物の高さをめぐる景観論争が度々起こっています。
1964年に誕生した京都タワーは、建築物ではなく“工作物”とみなし高さ規制をすり抜けたため文化人らが猛抗議しました。
1991年には、京都ホテルが法律の“特例”を適用して高さ60mの高層ビルに建て替えられる計画があり、京都仏教会が「古都の景観を損なう」と強く反発し、宿泊客の拝観を拒否する事態にも発展しました。
2007年には、100年先を見据えるとして、景観条例を全国で最も厳しいといわれる基準に改正。当時の桝本頼兼京都市長が「全国の景観史上初めての大事業、平成の都作り」と話すなど、古都の風情を保つことには長年力を注いできました。
「京都らしさが…」「買い物に便利」市民・観光客から賛否両論
市民や観光客からは次のような声が聞かれました。
(京都市在住)
「良いことしかないと思うので賛成です」
「買い物できる店が増えてもっと使いやすくなる」
(名古屋からの観光客)
「これ以上高いものは必要ないと思う」
「やっぱり京都らしくなくなっちゃう」
今後の流れは?
規制緩和をめぐる今後の流れは次の通りです。
(1)去年4月~学識経験者などの有識者会議で話し合い
(2)3月25日 有識者会議が意見書を取りまとめ
(3)京都市に意見書を提出
(4)京都市が調査・検討
(5)都市計画審議会で決定
(6)京都市長が許可
各プロセスについて京都市は期限を明言していませんが、「なるべく速やかに進めていきたい」などとしています。
(2026年3月26日放送 MBSテレビ「よんチャンTV」より)