学歴詐称問題で全国に知られるところとなった静岡県伊東市前市長の田久保眞紀被告(56)が、有印私文書偽造・同行使と地方自治法違反の罪で静岡地検に在宅起訴された。さらには、卒業証書を自作した上、インターネット通販で学長名と学部長名の印鑑作成を業者に依頼、偽造文書に押印していたという疑惑まで浮上している。
その内容が詳しく報じられると、会見などで「嘘をついていない」と主張していた田久保被告が、平然と嘘をつき続けていたと分かり、衝撃が広がっている。臨床心理士の岡村美奈さんが、会見映像などに残る「嘘の痕跡」について解説する。
* * * すべて嘘だった──その前提でこれまでの会見を振り返ると、田久保前市長の言動には嘘をつく時によくみられる特徴がいくつも見えてくる。たとえば、「卒業していないことを知って自分も驚いている」と明かした2025年7月2日に行われた会見だ。
田久保被告は冒頭で「自分が大学を卒業しているという経歴について、自ら公表していない」「除籍であることが判明しました」と釈明したが、このときの言葉の使い方から、いくつかの心理的特徴が読み取れた。
“私”ではなく”市民”と濁した心理
1つ目は無意識の「曖昧な表現」である。人は本来、嘘をつきたくないため、嘘をつく時は無意識のうちに曖昧な表現をする傾向がある。会見で、田久保被告は核心的なところで曖昧な表現を使った。卒業証書について質問された際は「私が卒業しているだろうと思われるものについてお見せした」と誤魔化した。チラ見せについても「これで自分の経歴がわかっていただけるかなと」と、疑問形で言葉を濁している。
2つ目は、不都合な話題からの「論点のすり替え」だ。不快に感じる嘘の話題から距離を取るため、論点のすり替えも目立った。「なぜ卒業したと思ったのか」という質問が繰り返されても、市議会議員全員に届いた怪文書に恐怖を覚えたという話や、除籍についての説明を繰り返し、回答を回避した。責任の所在について聞かれた際は、「私のことより、市民の皆さんが大きな期待を寄せて選挙にきてくださって投票して」と”私”のことではなく”周り”や”市民”について話し始めた。
そして3つ目、話の中に問題と関わりが薄い情報を入れて話を長く細かく説明しはじめた。説得力を増して信ぴょう性を高めつつ、自分の本心を隠したいからだ。田久保被告は卒業証書の質問に、事実関係の確認中としか言わないのに、除籍になっていたという話はこと細かに説明し、記者たちをいらだたせた。