乗客乗員26人が犠牲となった知床半島沖の観光船沈没事故から、まもなく4年です。運航会社の社長、桂田精一被告の刑事裁判が、17日結審しました。最後に桂田被告は何を語ったのでしょうか。
片山侑樹記者「午前9時半です。桂田被告を乗せた車が釧路地裁に入ります」「第12回の公判、乗客家族の前で何を語るのか注目されます」
桂田精一被告は、足早に裁判所へと入りました。
2022年4月、知床半島沖で観光船「KAZUI」が沈没し、乗客乗員26人が死亡・行方不明となった事故。
運航会社の社長で、安全統括管理者でもあった桂田被告は、事故を未然に防ぐ義務を怠り、船を沈没させたとして、業務上過失致死の罪に問われています。
船を直接操縦していない人物の刑事責任が問われる、異例の裁判です。
検察は、桂田被告に禁錮5年を求刑
検察は16日の論告で、桂田被告に、業務上過失致死罪の法定刑の上限となる禁錮5年を求刑しました。
「被告人の出航判断は、もはや素人的なものといわざるをえず、運航管理者としてありえないものであり、その人命軽視の態度は甚だしい」
最大の争点は…桂田被告が「事故を予見できたかどうか」
裁判の最大の争点は、桂田被告が、「事故を予見できたかどうか」です。
検察側は、事故当日は、運航基準を上回る風や波が予想されていて、春先は天気が急変しやすい海域の特性も踏まえれば、「事故は予見できた」と主張しています。
これまでの裁判で、桂田被告はこう述べています。
《法廷内でのやりとり》検察官「天気図の確認は?」桂田精一被告「僕にはあまり…」検察官「気圧配置が天候にどう影響を与えるかについては?」桂田精一被告「今でもわからない」
天候に関する知識を問われた被告人質問で、あいまいな回答を繰り返しました。
弁護側は無罪主張 最終論述で桂田被告は「責任を強く感じています」
一方、弁護側は、船の沈没は、ハッチの機能不全で起きたもので、桂田被告に「事故を予見することはできなかった」などとして、無罪を主張しています。
そして17日、結審を前に、被害者参加の弁護士が「検察が求刑した禁錮5年の実刑判決を望む」と、改めて主張しました。
被害者参加の弁護士「本件の本質は人の常識をもってすれば、誰もがその発生を事前に予測できた、起こるべくして起こった極めて悪質な人災事件にある」
終始、うつむきがちに座っていた桂田被告ですが、最後に証言台に立ち、こう述べました。
桂田精一被告(62)「私はこの事故を決して忘れることはありません。いまなお亡くなった方々と向き合っています。ご遺族に対しては取り返しのつかない事実の重さを改めて強く感じております。経営者として事故を防げなかった責任を強く感じています」
桂田被告に対し、乗客家族らは…
亡くなった伊藤嘉通さんの弟「桂田被告の最終陳述を聞いて、あの人が重大な事故を起こしたと認識しているのか疑問に思う」
行方不明の乗客、小柳宝大さんの父「(これまでの)私たちの心をえぐるような態度、居眠りしたりあくびしたり…なぜあんなにまでも私たちを苦しめなければいけないのか。ずばり実刑、それを与えてもらいたい」
家族が行方不明の道外在住の男性「26人の命がここまでの状況になっている中で、たった5年で刑期が終わったとして、許されるのか、許されるわけがない」
事故から、まもなく4年。なぜ船は出航したのか。なぜ止められなかったのか。誰がその責任を負うのか。判決は6月17日に言い渡されます。
裁判の争点…桂田被告の刑事責任は?
堀内大輝キャスター: きょうの裁判で、桂田被告の最後の陳述があったんですが、あらかじめ用意していた紙を左ポケットから取り出して、うつむきがちに読み上げました。その後、裁判官や検察、そして家族、傍聴席にも一礼をしていたということです。
堀啓知キャスター: 今回、船を操っていない、関与していない桂田被告の刑事責任が問われる異例の裁判ということですが、結審しました。改めて裁判の争点、まとめます。
▼運航会社の社長で、安全統括管理者の桂田被告は、業務上過失致死の罪に問われています。争点は、桂田被告が事故の発生を予測できたかどうかの「予見可能性の有無」です。
▼検察側⇒事故当日は運航基準を超える風や波が予想され、桂田被告は運航管理者として事故の発生を予見でき、出航中止などの注意義務を怠ったなどとして、禁錮5年を求刑しました。
▼弁護側⇒事故原因はハッチの機能不全であり、被告は天候が荒れる前に引き返すという認識で、知床岬まで航行を継続したのは船長の独断で、事故を予見することはできなかったとして、桂田被告の無罪を主張しています。
コメンテーター 寺田明日香さん: もう本当に被害者の方々、ご遺族の方々のお気持ちを思うと、もう計り知れないぐらいの悲しみと怒りなんじゃないかなというふうに思いますけれども、これ予見できたかできなかったかって、そもそもこの時期の北海道の海に落ちるだけでもどうなるかっていうことを、考えられなかったのかなというふうにも思いますし。やっぱり他の事業者が欠航にする中、運航されてましたよね。そこを管理者としてどういうふうにこう考えていたのかなというふうに本当に思います。
堀キャスター: 他の事業者はその1週間後のゴールデンウィークからということで、この桂田被告の会社は1週間前、早く運航したということなんです。確かにあの時の水温というのは確か2℃ぐらいでしたよね。ですので、仮にライフジャケットを着ていたとしてもですね、海に落ちれば船が沈没して、浮いていたとしても、10分、15分で低体温になって命に関わるっていうのは、専門家の方が言ってくれてますが、本当にそういうことも含めて、本当に安全管理っていうのが問われました。
桂田被告の刑事責任について専門家は…「責任は対等」
堀内キャスター: 今回の裁判で、操船に関わっていない桂田被告は、刑事責任を問われる可能性があるのでしょうか。海難事故に詳しい弁護士に聞きました。
海難事故に詳しい田川俊一弁護士「これは大変珍しい。操船していた船長、あるいは航海士が刑事責任を問われることはざらだが、乗船していない人が刑事罰を問われるのは大変珍しい。船長だけ(の判断)では危ないので、運航管理者に船舶の運航を中止させたりする権限を与えているわけだから、運航管理者の責任は当然重い。船長と運航管理者の責任は対等。船長にも責任がある。運航管理者にも責任がある」
堀内キャスター: 天気が悪ければ出航しないなどという判断というものを、船に乗っていない桂田被告、つまり運航管理者にも、船長と同じだけの責任があったというふうに専門家は見ています。
コメンテーター 田村次郎さん(ハンバーガーボーイズ): まず、あの業務上の立場が全然対等じゃなかったような感じだったと思うんです。結局、売り上げ上げろよっていうようなところで、船長も断れなかったっていうような話も私は、聞いていたんですけれど。そんな中でこの責任というところになってくると、それを断れないような状況にしていた…責任者に問われるっていうのは、運航管理者に問われるっていうのは、私は当たり前だと思います。ハッチが不具合だからどうのこうのって、ハッチの不具合を知らなかったとしても、あの天候で船を出航させていたら、他の原因で何らかの事故が起こるかもしれないということも、やっぱ考えなきゃいけないし、なんでそんなことを考えられなかったんだろうっていう。細かく挙げていくと、本当に怒りしかわいてこないんです。だから、無罪を主張しているということもありますけど、ちょっと信じられないなっていう感じがします。
堀キャスター: 二度とこのような悲劇が起きないように、事故の教訓を生かしていかなければいけません。判決は6月17日です。