合格発表前に「不合格です」高校受験の事前電話制度が廃止に 鹿児島独自の異例慣習に幕

高校受験の合格発表日、不合格者には事前に結果を通知する-。鹿児島県で独自に行われてきた「不合格内示」が今春廃止された。掲示板の前で失意を味わうのを避けるため、現地へ行く前に電話連絡する仕組みだったが、合否がホームページ(HP)で公表されるようになり、そうした配慮が不要になった。受験手続きのオンライン化は全国で進んでおり、手に汗握って掲示板の受験番号を確認する「風物詩」は変わりつつある。
「合格者が集まる中、不合格の生徒がショックを受けないように」。鹿児島県教育委員会の担当者によると、具体的な開始時期は不明だが、不合格内示は少なくとも数十年行われてきた。

公立高校の合格発表日、高校側は希望する中学校に不合格者の受験番号を事前に通知。中学校の教諭らが不合格の生徒に電話をかけ、結果を知らせる。逆に結果が張り出される時間までに連絡がなければ合格のサイン。合格者のみが現地に集まるのが、長年の鹿児島の慣習だった。
しかし高校側からの番号通知に漏れがあり、不合格が伝えられないミスも発生。県内全ての公立高が特設HP上で合否を発表する形式に移行したため、今年3月に廃止となった。
受験手続きのデジタル化は全国で進んでいる。デジタル庁によると、令和6年末時点で17都道府県がウェブ出願を実施し、ウェブサイトでの合格発表を行う都道府県は41に上っている。
さらに6年末時点で未実施だった6県のうち、今春までに4県がウェブでの合格発表を取り入れ、残るは徳島と石川の2県のみとなった。石川県は来春からのデジタル化を検討しているが、徳島県では未定だという。
デジタル化した自治体でも、HPとアナログでの発表を併用しているケースはある。宮城県では当初、デジタル化に伴い校内掲示による発表を廃止する方針だった。しかし受験生や保護者ら約3000人を対象にしたアンケートで、約6割が「継続してほしい」と回答。こうした声も重なり掲示板の存続が決まった。
継続の主な理由は合格発表サイトへのアクセス集中によるトラブルを防ぐことだが、「掲示板を見ることで高校入学への意欲が高まる」との意見も寄せられた。宮城県教委の担当者は「掲示板を残してほしいという声もある中、(発表の方法について)丁寧に検討を進める」と話す。
国際大の豊福晋平准教授(教育工学)は「国もデジタル化に力を入れる中、受験現場にも波及するのは当然。業務の効率化にもつながる」と指摘する。長年続いた春の光景が変わることに一抹の寂しさを覚える人もいるかもしれないが、「オンラインでもにぎわいは作り出せる」と豊福氏。例えば、高校側がSNSの公式アカウントを通じて入学前から生徒同士の交流の場を作るなど「オンラインだからできる関係づくりもある」といい、「『デジタルは冷たい』ではなく、考え方次第でデジタルの中にも価値を見いだすことができる」としている。(木下倫太朗)