「拉致被害者が生存している」北朝鮮ニセ文書に内閣情報調査室が踊らされていた 脱北者の売り込みに“相応の金額”を払い込みか 高市政権の“日本版CIA”創設に重大懸念

高市早苗首相の肝煎りで進められている”日本版CIA”の創設。現行の内閣情報調査室(内調)を格上げして「国家情報局」を新設する構想だが、本当に内実が伴ったものとなるのか──ある文書をめぐる経過を辿ると、重大な懸念が浮上した。元朝日新聞ソウル特派員のジャーナリスト・鈴木拓也氏がレポートする。
誤字脱字の多い文書
日本の情報収集や分析力を強化する国家情報局の新設などを盛り込んだ法案が近く国会で成立する見込みだ。「インテリジェンスの司令塔機能を強化することにより、国民の安全や国益を戦略的に守る取り組みを強化してまいります」と高市首相の鼻息は荒い。だが、「日本版CIA」とは程遠い日本の情報機関の実態が、北朝鮮の拉致問題をめぐる情報収集活動で浮き彫りになった──。
解決への道筋が見えない拉致問題への関心が薄まるなか、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)系の日刊紙・世界日報が3月17日にソウル発で、センセーショナルな見出しの記事を配信した。
〈正恩氏 拉致解決承諾か 北朝鮮内部文書「政府認定12人の大部分生存」ロシア派兵前、外貨不足で〉
記事によれば、同紙が入手した「北朝鮮内部文書」には〈敬愛する最高領導者 金正恩同志の2022年12月7日批准方針〉と記され、党組織指導部が作成したとみられると指摘。正恩氏は同年11月15日と12月7日に〈共和国(北朝鮮)に造成された難関を克服し、日本植民地賠償金問題に終止符を打つための事業を了解〉し、〈日本政府と(の間で)提起されるあらゆる問題は、金与正副部長同志の責任の下、関係部門の人員と議論し、具体的な対策案を立てる〉という指示を出したというのだ。
さらに対策会議では、最も重要な問題として日本政府の認定拉致被害者12人を挙げ、〈実際12人のうち一部死亡者がいるが、大部分が生存している〉との認識が示されたという。事実であれば衝撃的な大スクープだ。
一方、文書には誤字脱字が多く、世界日報も記事でそのことを指摘している。ただ、北朝鮮の元駐英公使、太永浩氏が「これは金正恩氏への報告が済んだ後、下部組織に伝達される段階の文書」「下部組織に伝達される過程で生じた、避けられない誤字脱字と見るべきだろう」と指摘するコメントを紹介。文書は本物の可能性が高いとのトーンで報じた。だが、約10年前に脱北した北朝鮮の元省庁幹部は苦笑交じりに話す。
「首領様に報告する文書には1字たりとも誤字脱字は許されない。もしそうした文書を誤って上奏すれば誰かの処分問題に発展するのは間違いない。仮に太氏が指摘するように金正恩が批准した内容を下部組織に伝える文書だとしても、首領様の指示を誤字脱字で伝えるのは不敬にあたる。行間が不自然に空いているなど北朝鮮の行政文書のスタイルとはかけ離れている。このような最高機密が文書を通じて下部組織に共有されるはずもない」
情報を持ち込む脱北者