転落の瞬間、指が触れた被害者の絶望【旭川女子高校生殺害】「梨瑚さんも本当のことを話して」服役中の共犯の女が出廷へ…内田被告が争う“殺意の有無”《連載④》

2024年4月、北海道旭川市の郊外で、当時17歳の女子高校生が衣服を脱がされて暴行を受け、さらに吊橋の上から石狩川へ転落死した事件。
事件から約2年を経て、主犯格とされる北海道旭川市の無職・内田梨瑚被告(23)の公判が25日から始まる。
まだ雪が残る人気のない真夜中の現場で一体、何が起きていたのか。
事件が発覚した当時の捜査機関や関係者への取材、共犯の女の裁判で明らかになった内容から、改めて事件の経過を追う。《5回シリーズの4回目》
【第4回】共犯の女
内田被告の共犯とされる、受刑者の女(19歳・事件当時)は、2025年に旭川地裁で懲役23年の判決が確定し、服役している。 当時の裁判員裁判では、生々しい犯行の状況を証言した。
北海道旭川市の無職の19歳の女(年齢は事件発生時)は、内田梨瑚被告の「舎弟」として、荷物持ちや買い物の代行をするなど親密な関係を持ち、内田被告を「りこしゃん」と呼び、慕っていた。
2人は数年前に何度か会う程度の間柄だったが、事件の直前に偶然再会してから親密になった。
女は犯行時、19歳であったために少年法が適用され、検察庁は家庭裁判所に女の身柄を送った。
家庭裁判所は、審判で「刑事処分が相当」であると決定し、身柄を検察庁に送り返した(いわゆる「逆送」)
2022年に改正された少年法では、18歳と19歳の少年は「特定少年」とされ、重大事件の容疑で逆送された場合、原則として20歳以上と同様に取り扱われる。犯罪が重大で地域社会に与える影響が大きいと判断された場合には、起訴時に検察庁が実名を公表する場合もある。
事件当時19歳だった共犯の女は2024年8月、北海道の特定少年事件としては初めて検察庁が起訴時に実名を公表した。(HBC北海道放送は、地上波テレビ放送では実名で放送したが、インターネット上に配信する記事は、実名や顔写真が半永久的に残る特性を考慮して、更生の妨げにならないよう匿名で報じている)
2025年2月に旭川地裁で始まった裁判員裁判で、共犯の女は起訴内容を全て認め、量刑が争点となった。
内田被告が”出廷”
法廷では、生々しい犯行状況が明かされ、共犯の女は涙ながらに聞いたり、傍聴席の関係者に謝罪したりする場面があった。
公判の中盤、検察側が求めた証人として内田梨瑚被告が出廷した。
黒いタートルネックに黒いズボンで法廷に現れた内田被告。
傍聴席や「舎弟」と呼んでいた共犯の女に、視線が向けられることはなかった。
「話したくありません」
法廷で内田被告は何を話すのか、注目されたが…
裁判長「証人尋問にあたり、宣誓してください」 内田被告「しないです」
「宣誓」とは、真実を述べ、何事も隠さず、偽りを述べないことを誓うもので、宣誓後、嘘の証言には刑事罰が科される。
宣誓をしない証言は、真実性を担保できないため、そのまま証人尋問が進められることはない。
裁判長は何度も宣誓を促したが、内田被告は「同じ内容の裁判を控えているので、ここでは話したくありません」と述べ、結局、証人尋問は打ち切られた。
わずか5分程度で退廷させられた内田被告は、事件について一言も述べることはなかった。
公判終盤の被告人質問で、共犯の女は検察側の取調調書の内容を全て認めたうえで、女子高校生が橋から転落する時の状況を説明した。
川の方を向き、大きく深呼吸…
「吊橋の欄干の外側に女子高校生が立つ形となり、女子高校生は川の方を向き、肩の高さまで手を広げて大きく深呼吸し、前の方へ向きかけたところ、内田被告が押した」
「転落時、女子高校生は吊橋のロープと欄干につかまっていて、手を伸ばしたが、指が触れる程度で、「キャー」という声が聞こえたあと「バン」という音が聞こえた」
「内田被告に『ヤバくないですか』と言ったら、『行くよ』と手をつかまれて駐車場に向かった」
「私たちは責任を負うべき」
「あの日の本当のことを話しておきたかった。被害者への義務だと思った。梨瑚さん(内田被告)にも本当のことを話してほしい」
「梨瑚さんを止めなければいけない立場だったが、止めるどころか、一緒に暴力を振るったり、何度もひどいことをした。その結果、被害者の子を亡くならせてしまった。私たちはその責任を負うべきだと思う」
共犯の女は涙ながらに傍聴席の関係者に何度も頭を下げた。
判決で裁判所は「残酷で極めて悪質な犯行。酌量の余地はないが、犯行で果たした役割の大きさは、内田被告に比べやや低い」などとし、検察側の懲役25年の求刑に対し、懲役23年の実刑判決を言い渡した。
女は、判決を受け入れる意思を弁護人に示し、控訴する権利を放棄する手続きを裁判所に行い、検察側も同様の手続きをしたため、控訴期限より前に判決が確定した。
共犯の女は証人として内田被告の裁判員裁判に出廷へ
25日に始まる内田被告の裁判員裁判。服役中の共犯の女は、今度は「証人」として出廷することになっている。
内田被告の弁護人は、「共犯の女の裁判が内田被告の裁判に影響はあると思う」と前置きをしたうえで「共犯の女と内田被告の裁判は別々であり、裁判所や裁判員には、冷静に分けて考えてほしい、目の前に現れたもので判決をしてほしい」と主張している。
内田被告の弁護側は、裁判では「殺人への関与と殺意」など、3点について争う方針だという。
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