「特区民泊」大阪市で駆け込み申請急増、苦情相次ぎ29日に受け付け停止…男性「民泊は利益大きく急いで準備進めた」

大阪市は、マンションの居室や戸建て住宅で宿泊営業ができる「特区民泊」の申請受け付けを29日で停止する。申請窓口のある市保健所では4月以降、「駆け込み申請」が急増している。一方、民泊に関する住民からの苦情は右肩上がりで、市は対策チームを増員し、指導に本腰を入れ始めた。(林興希、苅田円、新谷諒真)
決定前の1・5倍
受け付け停止まで残り1週間となった今月22日。「船場センタービル」(大阪市中央区)に入る市保健所では、特区民泊の申請窓口が開く午前9時前、すでに約40人が列を作っていた。
申請に訪れた同市生野区の飲食店経営の男性(44)は昨年10月、購入した中古物件を使って副業で民泊を始めた。民泊は「利益が大きい」といい、すぐにもう一軒増やすことを決め、期限に間に合うように物件を確保した。「急いで準備を進め、なんとか間に合いそうだ。近隣の人からは騒音などを心配する声が多い。風当たりが強いことを意識して運営していきたい」と話した。
市が新規申請の受け付け停止を決めたのは昨年9月30日。市内には当時、民泊が約7000施設あり、ゴミの出し方や騒音などを巡って近隣住民とのトラブルが増加していた。
市の停止決定後、昨年10月~今年4月の申請件数は月平均312件で、決定前の昨年1~9月(月平均212件)に比べて1・5倍となった。特に今年4月は434件で、5月はさらに上回るペースという。
市保健所には受け付けや物件の現地調査の担当者が約30人いるが、手が回っておらず、5月は他部署から10人以上の応援をもらっているという。担当者は「市民の不安が増しており、ずさんな対応はできない。業務は立て込んでいるが、確認を徹底したい」と話した。
全国の94%集中
内閣府によると、特区民泊は今年2月現在、東京都大田区や北九州市など全国7自治体で計8664施設が認定されている。大阪市にはこのうち94%にあたる8178施設が集中している。
市が今年2月に公表した営業実態調査(5824施設が回答)では、「苦情の窓口を周知していない」「滞在者へ騒音やゴミ捨ての注意喚起を行っていない」など、不適切な運用をしている可能性がある施設が124あった。苦情があった場合、担当者が「おおむね10分以内」に駆け付けるという市の指針を満たす施設は4割弱にとどまった。
同市西成区に住む女性(76)は「近所の民泊では、外国人旅行者がベランダでよくたばこを吸っている。臭いが洗濯物に付くし、吸い殻のポイ捨ても多い。最近も施設に苦情を言ったが、対応してくれた様子はない」と話す。
4900施設調査へ
市に寄せられる苦情も増えており、昨年1~3月は月40件を下回っていたが、今年1月以降は月80件を上回っている。
市は4月、市保健所内に設置する「迷惑民泊根絶チーム」のメンバーを従来の4倍の20人に増やし、民泊が集中する市中心部などの約4900施設を対象に立ち入り調査などを始めた。
チームは今年度中に全対象施設を調べる予定で、横山英幸市長は21日、記者団に「指導に応じない事業者があれば、認定取り消しなどの厳しい処分も当然、検討していく」と述べた。
◆特区民泊=外国人観光客の増加によるホテル不足を補うため、政府が旅館業法の特例措置としてスタートさせた。「国家戦略特区」に指定されたエリアで、「居室の床面積25平方メートル以上」「外国語案内の設置」などの条件を満たせば、マンションの居室や戸建て住宅などで宿泊営業が可能となる。