かつて高市首相は「女性天皇に反対しない」と明言していた…ノンフィクション作家が見た“彼女の驚くべき変節ぶり”

〈 「なぜ愛子さまが天皇になれないのか。率直に疑問です」男系男子縛りはもはや“ムリゲー”。時代に即した皇室のアップデートを 〉から続く
2月27日の衆院予算委員会で、高市早苗首相は「男系男子に限ることが適切とされている。私としても尊重している」と述べた。だが彼女は2021年、『文藝春秋』で「女性天皇には反対しない」とはっきり語っている。そのインタビューをしたのが、ノンフィクション作家の石井妙子氏(57)だ。
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「男系男子に限る」と言い続けた高市首相
高市首相はかねてより、男系男子での皇位継承にこだわってきました。
04年に小泉純一郎首相の私的諮問機関として設置された皇室典範に関する有識者会議が、「女系、女性天皇を認める。皇位継承は長子優先」とする報告書を05年に提出した後も、彼女は「男系男子の伝統を守るべき。初代天皇のY染色体が女系の女性天皇では途絶してしまう」と述べていました。
私の取材時にも、「父方の血統が、初代天皇から繋がっているのが皇統です。2600年以上の長きにわたり、一度の例外もなく男系でした」と語りました。そこで、皇位継承者は天皇の子孫であることが重要で、男性でも女性でも同等に尊いのではないか、と問うと、「私は女性天皇に反対しているわけではありません。女系天皇に反対しています」と、明確に述べたのです。
しかしその後、高市首相は「女性天皇には反対しない」という発言を封印し、国会等では「男系男子に限る」と言い続けました。おそらく、保守派の支持層に気を遣っているのでしょう。
政治家たちは歴史を正しく理解しているのか
ただ、よく言われるように「男系男子」という制度は明治に誕生したものです。
政府から立憲制度の調査を命じられた伊藤博文は、ウィーン大学の国家学の権威・シュタイン教授に学び、「男系男子を基本としつつ、やむを得ない場合には女系で継ぐ」と考えていました。実際、1886年頃に発表した皇室典範の草案「皇室制規」では女系を容認しています。
しかし、法制官僚の井上毅が強く反対し、伊藤の女系容認案は見送られました。
三笠宮崇仁親王も1946年の新憲法公布日、女帝についての文書を記しています。文書の中で三笠宮は、現時点では女帝は時期尚早であるとしています。それは女性の能力が劣るからではなく、そのような教育を女性皇族が受けていないからだ、と。ただし、男女共学の教育を受けた女性皇族が母として子どもを教育するような時代になれば、女帝を再検討すべきだとしているのです。
その後、女性も高等教育を受けられる時代になり、男性と同じ教育を雅子さま、紀子さまも受けています。愛子さまや佳子さまは、三笠宮が予言した、「男女共学の教育を受けた母親が教育した女子皇族」です。
こうした歴史を、一体、どれだけの政治家が理解しているのでしょうか。
高市首相は、ある質問に回答をはぐらかした
男系男子論者の方々は、「皇室の歴史は2600年以上続く伝統がある」と主張しています。それは、『記紀』(『古事記』や『日本書紀』)などの記述を基にしているのでしょう。
ただ、『記紀』に記された皇室の祖とされる皇祖神の天照大御神は女神です。だとすれば、天照の子孫である初代・神武天皇は、女系天皇なのではないでしょうか。その疑問を高市首相に訊ねたところ、「一般的に神武天皇から始まる」と、かわされてしまいました。
また、大正天皇や明治天皇を始め、歴代天皇の多くが側室を母としています。そこで男系男子での皇統維持は側室制度抜きには成り立たないのではないか、とも問いましたが、やはり正面からの真摯な返答はありませんでした。
曖昧な高市首相の論拠…ミスリードと見られる事例も
最も気になったのは、世間の声への高市首相の反応です。国民の間で女性天皇待望論が強まっていることへの見解を聞くと、「私はそのような待望論を承知していません。どのような根拠があるのですか」と、問われたので、驚きながらも一例として、NHKが19年9月に行った調査で、女性天皇に賛成する人が74%、女系天皇も賛成が71%だったことを伝えました。それでも、「その調査については、私は承知しておりません」と、言ってのけたのです。
高市首相は今年、統一教会の内部文書「TM特別報告書」に、自身の名前が記載されていたことが発覚した際、「出所不明の文書」として済ませようとしました。自分に都合の悪いことは、存在そのものを認めようとしない姿勢が、見て取れます。今後、国民の間でいくら女性天皇待望論が高まっても、「承知していない」と突っぱねるのでしょうか。
皇室典範改正を巡り、ミスリードと見られる事例もありました。高市首相は2月、21年に有識者会議がまとめた報告書に触れた上で、「男系男子に限ることが適切とされている」と語りました。しかし、報告書は皇位継承資格と切り離し、皇族数確保策をまとめたものです。木原稔官房長官がその後、本人に代わり釈明する事態になりました。
これほどまでに、首相の論拠は曖昧なのです。あやふやな知識で、重大な問題を論じようとする態度には危うさを感じます。
皇室制度は伊藤らによって、明治時代になって作られたものです。それを令和のいま、“伝統だから”という理由で何も変えないことがいいのか。
令和の私たちの価値観や社会に皇室が適合していなくては、国民統合の「象徴」とは言えないのではないでしょうか。
「 週刊文春 電子版 」では、 旧宮家の生活実態や本人たちを連続直撃した【「愛子天皇」大論争に新展開】旧宮家・男系男子の衝撃告白「女系天皇でいい」 など続報を配信中。 女性・女系天皇の賛否についての25000人アンケートの結果 や 「愛子天皇」をなぜ高市首相は拒絶するのか《宮内庁長官を直撃》 など「愛子天皇」論争について詳しく報じている。
〈 「このままでは愛子天皇への道は完全に閉ざされる」皇室典範めぐる目下の議論は、なぜ“天皇の長女”を頑なに拒んでいるのか? 〉へ続く
(石井 妙子/週刊文春 2026年5月7日・14日号)