選挙中のSNS規制、与野党で法改正の骨子案…きっかけは大荒れの兵庫県知事選

与野党9党による「選挙運動に関する協議会」は、SNSでの偽情報や誹謗(ひぼう)中傷への対策強化を話し合ってきた。先月末、事業者への規制などについて合意し、主な法案骨子は次のとおりだ。
1.YouTubeやX(旧Twitter)のようなSNS事業者には、偽情報の拡散による悪影響を軽減する措置を義務付け、実施状況を年1回公表させる。措置の具体例として、収益化の停止、広告収入を得ているアカウントの表示など
2.生成AIで作成した動画や画像のうち、実際に撮影されたと誤認される恐れのあるものには、AI作成を明示するよう義務付ける
今国会でSNS規制が議論されることになった大きなきっかけは、2024年11月の兵庫県知事選だ。
立候補した立花孝志被告(名誉毀損で逮捕・勾留中)は斎藤元彦知事を応援する、いわゆる“二馬力選挙”を展開し、丸尾牧兵庫県議や亡くなった竹内英明元県議らを直接的に攻撃し、デマを含むSNSなどで誹謗中傷した。そして、立花被告に呼応する形で一般の政治系YouTuberらが、丸尾氏や対立候補らを誹謗中傷するデマの切り抜き動画を大量に公開した。
TBS系「報道特集」は、匿名の政治系YouTuberにインタビューしており、その人物は「選挙期間中は政治チャンネルにとって間違いなく『バブル』。2週間でがっつり稼ごうと思ったら、100万円とかは堅く、普通に稼げる」と語る。
要するに、政治系YouTuberらは収益目的で再生回数を稼ぐために、特定の候補を応援し、対立候補を誹謗中傷するのだ。この収益化の構造にメスを入れなければ、候補者への誹謗中傷はなくならないだろう。匿名の政治系YouTuberはこう話す。
「収益目的のチャンネルは信条というより、儲かるところを追いかけていく。『政治がどうなろうと知らないよ』というような感覚で収益目的で動画を作っている人も結構いる」
兵庫県議の丸尾氏には今でも脅迫電話が毎日のようにかかってくるという。また、注文していない商品が届いたり、勝手に保険契約されたりという嫌がらせもあったそうだ。
丸尾氏はSNSの誹謗中傷について、裁判所に100件を超える開示請求をしてきたが、氏名まで特定できたのは5人だった。丸尾氏は「投稿者の特定に法制度上の高いハードルがある」と指摘し、裁判手続きなどをしている間にプロバイダーの通信保存期間が過ぎてしまうのだという。
今回、国会で示された骨子案で、事業者に求める「措置」には収益化の停止や収益化アカウントであることの表示なども含まれてはいる。しかしながら、何を実施するかは事業者の判断に委ねられており、法改正が実行力のあるものになるかどうかは不透明だ。
収益化の停止は、投稿自体を制限するものではなく、表現の自由の侵害にはならない。事業者任せにせず、実効性のある規制が求められる。
与野党の協議会は、来年春の統一地方選に間に合うよう、今国会での成立を目指している。
文/横山渉 内外タイムス